一方残された守護聖たちは……。
「で、どういうことなのだ?」
何がなんだか分からないままの守護聖とロザリアは、なんとか事情を理解しているオリヴィエに詰め寄る。なんせ、
もう一人事情を理解しているクラヴィスに期待するのも無駄な気がするし。
「だから、あれは陛下の心の一部なわけ」
「心の一部…ですか?」
「ん…だから、あれは心の迷いからだと思うけどね」
首を傾げるマルセルにオリヴィエは言葉を続ける。
「昔から、頑張りやだったから」
「そーそー。脳天気で元気なだけが取り柄だったもんな」
うんうんと頷くゼフェル。
「それが原因なわけ」
「え?」
オリヴィエの言葉の真意が分からない一行は顔を見合わせるだけ。
「頑張ろう、しっかりしようと思うことが必要以上にプレッシャーになってるんだよ。心がそのことで一杯になってね」
「しかし…それは当然のことではないか。何をいまさら……」
「あんたは黙ってて、ジュリアス。話はまだ途中。そう思う反面、『本当に自分でいいのか?』って迷ってたんだよ」
そこで言葉を切ったオリヴィエにロザリアは反論する。
「でも、オリヴィエ様。陛下は私以上に頑張ってました。私自身、それを認めてます。だから、私は……」
「わかってるよ、ロザリア。でも、陛下は思ってた。そして、陛下は自分自身がそんな迷いを持ってるなんて、私たちに
申し訳ないから、もっとしっかりしようと思った。そしたら、迷いは大きくなって……。あの子は陛下の心の一部であり、
影。陛下の心は私たちに見せている部分は言わば光の部分。光が強ければ、影もまた濃くなる。あの子の存在感が
大きくなるほど……」
「つまり、心のどこかで迷い子になっていたんですね……。貴方やクラヴィス様があの子が陛下だと気づいた理由が
わかりましたよ。夢は心の一番奥の深層部分を表わし、疲れた心が求めるのは安らぎ……」
リュミエールの言葉にクラヴィスはほんの少し笑みを漏らす。
「あくまでも…仮説に過ぎない話だがな……。後のことはルヴァに任せるがいいだろう」
「まぁね……。あの子が一番最後に訪れたんだしね」
「どういうことなのだ?」
オリヴィエの言葉に訳がわからず首を傾げる一同。
「陛下…ルヴァと仲が良かったから、最後まで心の弱さを見せたくなかったんだよ……。気づかれると思ってのことだ
けど……」
「ルヴァはすぐに気づいた様子だがな……」
「だから…ルヴァに任せて……」
オリヴィエの言葉が止まる。ロザリアがポロポロと涙を零したのだ。
「ロザリア……?」
「馬鹿だわ…あの子……。何のために、私が傍に居るのよ……」
強い口調と裏腹に涙は止まらない。
「あの子が好きだから…私は傍に居るのに……」
ロザリアの言葉はもっともである。あんな小さな少女になって確認しなければ、不安だったと言うのだろうか…と。
「ほら、ロザリア。美人が台無しだ」
オスカーに差し出されたハンカチを受け取りロザリアは涙を拭う。
「陛下が戻ったら…叱ってあげなきゃ」
「あんまり厳しくしたら、可哀想だよ、ロザリア」
不安そうに言うマルセルにゼフェルは悪戯っぽく笑う。
「いいんだよ、なに言われてもめげないのがあいつじゃねーか」
「女の子になんてことを言うんだ、ゼフェル」
たしなめるランディにどこ吹く風のゼフェル。それを見て、くすくす笑うリュミエール。なんだかんだと意見がまと
まった様子にジュリアスは苦笑する。
「聖地も変わったものだ……」
「いまさら…だろう……」
クスリと微かにクラヴィスは笑う。ジュリアスとて本心でないから、何も言わない。そう、みんな同じ。女王としてだけ
でなく、一人の人間として、アンジェリークを大切に思っているのだから……。
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