「あ……」
 唇が離れると、すっかり弛緩した身体がソファに沈み込む。その瞳はかすかに潤んでいて。アリオスは満足そうに
笑みを浮かべた。
 ふと、視線を巡らせると、テーブルの上の扇が目に入った。アンジェリークに持たせたものだ。繊細な作りのそれの
先には鮮やかな羽根が飾りに着いていた。
「いいもんがあるじゃねえか」
「?」
 アリオスの意図するところが判らず、アンジェリークはテーブルからそれを持って来るのをぼんやりと見つめている
だけだ。いや、思考がぼんやりとしているといった方が正確なのかもしれない。先程までの行為で指の先から一本も
自分の意思で動かせない。
「アリオス」
 扇を持ったアリオスが再びアンジェリークに覆いかぶさっても、ただぼんやりと受け止めていた。
「こういう使い方もできるって知ってたか?」
「え?」
 アンジェリークが反応するより先にアリオスが動いていた。
「や、やだ!」
 背中にゾクリとした何かが走る。ふわり、ふわり。柔らかで軽やかな感触が何度も肌を滑り降りる。アリオスが扇で
何度もアンジェリークの首筋を撫で上げてゆく。
「やだ、そんなの……」
 直接ではなく、間接的に触れられるその感覚に身を震わせる。微妙な感触はくすぐったくもあるが、それだけではない
感覚も生み出しているのだから。
(な、なんで……?)
 身体に熱がこもり始めていることに気付き、アンジェリークは愕然とする。先程、爪先を舐められていた時に沸き
上がった感覚が再び、だ。執拗に耳朶から首筋に与えられる感覚はいつもと違って微妙なものであるのに、反応して
しまう自分の
身体が恨めしかった。
「い、いや……」
「嫌?」
 唇の端を僅かに上げて、アリオスは笑う。
「本当に嫌なら、ここはこんな風にならないはずだろ?」
「!」
 ドレスの上から直接膨らみに触られ、アンジェリークの身体が硬直する。膨らみの頂点は布越しにも硬くなりつつある
ことが見て取れた。
「ここ、こんなにしてて言う言葉じゃねえだろ?」
「!」
 衣裳の上から硬くなったそれを摘まれて、アンジェリークは身を竦める。その反応に気をよくしたアリオスはアンジェ
リークの背に腕を回し、ドレスのファスナーを下ろした。そのまま、アリオスはドレスを脱がせてしまう。
 ドレスに包まれていた素肌は淡く色づいていて、艶やかさすら感じさせる。
「や、……」
 いくら時間を掛けても、慣れようとしない。その反応がやはり楽しい。
「あ……」
 耳朶を甘く噛んでしまうとアンジェリークは身を竦める。その素直な反応を楽しみながら、アリオスは柔らかな膨らみに
手を伸ばした。
 柔らかでいて、確かな感触を指先で幾度も確かめれば、素直な身体は反応する。
 ドレスを脱がしてしまえば、無防備な下着姿になる。アリオスは躊躇いなく胸の砦を外すと、開放された柔らかな膨らみは
軽く揺れた。アリオスは再び扇を取り、今度は胸を撫ではじめた。
「な、何するのよ……」
「首でも楽しめてたんだから、もっと楽しめるだろう?」
「そ、そんな……」
 ふわりとした不可思議な感触が胸の頂を掠める。敏感になっているそこはプクリと尖っていて。いつものように施される
愛撫とは違う感触にアンジェリークはただ身を震わせた。
「あ、ぁ……」
 涙がぽろぽろとこぼれる。自分の体なのに自分の思うとおりにならない。それが悔しい。そして、それ以上にアリオスに
触れられることを望んでいる。悔しいから涙が流れるのではない。身体の昂ぶりについていけなくて。快楽がもたらす涙で
あることをアンジェリークは知らないのだ。



扇はいいよね〜

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