靴とストッキングを脱がされてしまうと、足が露になる。両足ともつま先が少しばかり赤くなっていた。
「靴擦れだな」
「だって、慣れないんだもの……」
普段はスニーカーやローファーなどしかはかないから。いきなりのヒールはかなり足に負担だったらしい。
「それにだいぶ疲れてるだろ?」
「わかるの?」
アリオスの指摘にアンジェリークは驚いてしまう。そう正直、足がだるかった。だるいのを通り越してふくらはぎが痛い。
「靴は自分の足に合うのでないと、疲れるんだ。オリヴィエに頼んでりゃよかったな」
靴は以前にチャーリーが買っていてくれたもので。足のサイズは正しかったようだが、少しばかりきつかったのだ。
「ま、舐めときゃ、治るな」
「え……」
その言葉に思わず足を引きそうになるが、それは許されずに足首を掴まれてしまう。
「あんまり暴れると、中が見えるぜ?」
「!」
ミニのドレスを身にまとっていることを、その事で思い出し、アンジェリークは慌ててスカートの端を押さえた。
「見せたかったんじゃないのか?」
「〜」
揶揄するような口調のアリオスをアンジェリークはにらみつける事で抗議するしか出来なかった。
ぺロッと、アリオスの舌が赤くなった靴擦れに触れる。その感触にビクンっとアンジェリークは身をすくめた。
(な、なんか……)
これはただの消毒だ、と自分に言い聞かせる。だが、アリオスの舌は靴擦れだけではなく、足の指までもなめ始めた。
「ちょっと……」
「気にするなよ」
「だって、汚い……!」
「それだったら、余計に綺麗にしねえとな」
「!」
足の指を一本一本丁寧に口に含み、舌を這わせてゆく。
「や……!」
奇妙な背徳感に苛まされる。ソファに腰掛けているアンジェリークの足を跪づいたアリオスが丁寧に舌を這わせ、舐めて
いる。いつしか、指は全て舐め尽くされて、足の甲に移っていた。
(や、何だかヘン……)
アリオスがしているのはただの消毒だ。何度も自分に言い聞かせて見る。だが、体中を駆け巡るゾクゾクした感覚はアンジェ
リークの神経を蝕もうとしている。知らない感覚ではない。むしろ、何度もアリオスの手で覚えさせられた。頭が真っ白になり、
自分が自分でなくなるあの……。
(だ、ダメ、意識しちゃ……)
目をつむって、唇を強くむすんで、必死にその感覚に耐えようとするが、そうすることによって、より肌は敏感になり、耳から
入る音はアンジェリークの羞恥心を煽らせる。
アリオスはチラリ、とアンジェリークを見上げると、獲物を捕まえた猛獣のような瞳で笑みを浮かべた。
(今、自分がどんな顔してるかなんて、自覚ないんだろうな……)
もちろん、そう仕向けたのはアリオスではあるが。今のアンジェリークの表情は男であれば、そそられるものだ。
身体に馴染んだ快楽を耐えようと堪えるその表情は知らず艶めいている。無自覚だからこそ、より男を誘うのだ。
先程までのパーティ会場でアンジェリークに向けられていた視線。アンジェリーク自身は自分がこの場で浮いているから、
そぐわないからと思っていたようだが、そうではない。みずみずしい輝きと艶やかさを身に纏う少女への感嘆の視線だ。そして、
その少女を独占するアリオスへの羨望と嫉妬の……。
「ね、もう、大丈夫だから……」
弱々しく足を引こうてしたアンジェリークであったが、逆にアリオスに足首を掴まれて、それもかなわなかった。
「や、何するのよ!」
じたばた暴れて見たところでアリオスの腕を解ける筈もなく。結局は無駄な抵抗で終わってしまった。
「消毒は終わったんでしょ? もう離してよ!」
きつい口調、だ。並の男なら、怯むこともあるだろう。だが、睨みつけてくる瞳の僅かな揺らめきを見逃すアリオスではない。
無意識に誘う瞳はアリオスだけが知るアンジェリークの姿、だ。
「本当に嫌なら、何だってそんな風に誘う目をしてんだよ?」
「誘ってなんか……!」
抗いの言葉を投げかける前に、アリオスが立ち上がり、アンジェリークをソファに押し付ける。あまりにもすばやいその動作に
アンジェリークは正されるがままだった。
「こういうシチュエーションも悪くない、ぜ?」
「何が、こういう……」
それ以上の言葉を紡ごうとしても、アリオスの唇に飲み込まれる。言葉も、と息すらも飲み込まれてしまえば、アンジェリークに
これ以上、抗いようがない。
「ん、ぅ……」
強引に入り込んできた舌が逃げようとするアンジェリークのそれを絡みとる。息すらもできない深い口付け。アンジェリークの
体から完全に力が抜けるまで、それは続けられた。
だんだん、やばくなってきました。
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