何曲か踊ってるうちにアンジェリークもずいぶん慣れてきた。アリオスのリードに合わせ、上手く踊っている。だが、
アンジェリークは限界を感じ始めていた。
(……痛い)
慣れないヒールのため、足に妙な負担がかかったのか、かなり辛い状態になってきている。もしかしたら、靴擦れも
出来ているかもしれない。考えると痛いし、動けなくなりそうなので考えないようにはしているが。
「足がどうかしたのか?」
「!」
驚いた瞳でアンジェリークはアリオスを見上げた。気遣ってくれるとは思っていなかったのだ。
「ごめんなさい……。ヒールってなれなくって……」
「だろうな。悪かったな気づかなくて」
そう言うと、アリオスはアンジェリークを抱き上げてしまった。
「きゃあ?」
「なんだよ、素っ頓狂な声を上げるなよ」
「だ、だって〜」
周りの視線がとても痛い。だが、いきなり抱き上げられてしまったのだから、アンジェリークにしてみれば、当然の反応
だろう。
「足、診てやるから」
「う〜」
有無を言わさないアリオスの態度にアンジェリークは真っ赤になりながら、にらむ事しか出来ない。
「おとなしくしないと振り落とすぞ」
「わかりました……」
この場合、アンジェリークの方に分が悪い。アリオスはアンジェリークの足を気遣ってくれている事になるのだから。
おとなしくアリオスの首に手を回した。
運ばれたのはホールの近くにある小部屋だった。ベッドとソファと少しの家具という取り合わせにアンジェリークはきょろ
きょろと部屋を見回す。
「いいの、勝手に使ったりして?」
「ああ。こういうパーティだとな。途中で気分が悪くなった客に部屋を貸してやったりするんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
こういう世界のことはよくわからないから、多分そうなのだろうと思ってしまう。このあたりの素直さにアリオスは笑みを
こぼしてしまう。
「何よ」
「何でもねぇよ」
アンジェリークの追及をかわすと、アリオスはアンジェリークをソファに下ろして、ヒールの靴を脱がせた。
「ちょ、ちょっと。自分で出来るわよ!」
「いいから、おとなしくしてろ」
「やだ、どこ触ってんのよ!」
アリオスの手が丁寧にストッキングまで脱がせてしまう。ゆっくりとしたその動作は肌の細胞の一つ一つを愛でるような
感じ。何故か、心臓が高鳴る。
(や、やだ、なんで……?)
アンジェリークはソファに座っていて、アリオスは片膝をついている。その体勢が何となく背徳的で。見上げるアリオスの
視線に背中にゾクゾクするものを感じた。
「ほら、もう片方の足……」
「ん……」
その声に逆らえなくて、もう片方の足もアリオスに向ける。アリオスは同じように靴を脱がし、ストッキングを脱がしていった。
今、読み返すと。アンジェリークって怖いわ……
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