「お前、パーティーに出たことあるか?」
「パーティー?」
夕食後の後片付けの後で家に戻ってから、言われたアリオスの言葉にアンジェリークは唐突過ぎて着いていけない。
「返事をさっさとしろ。あるのか、ないのか?」
「ないわよ……」
どうして、高圧的な物言いしかできないのだろうか。最も自分たちの関係からはこれが相応しいのだろうけれど。どんなに
足掻いても、アンジェリークはアリオスに買われたのだ。最終的に逆らうことなどできるはずがないと、踏まれている。そして、
それに結局は抗えない自分自身。
「バースデーパーティーとかそういうんじゃなくて、所謂お金持ちが行くようなパーティーに縁がある人生だと思うの?」
「確かに、縁はないだろうな」
食べていくだけで精一杯だった毎日を過ごしていた少女にそんな余裕などあるはずはない。
「でも、ああいうところって、疲れるだけでしょうね。腹の探りあいとかありそう」
「どろどろしてるところはそうだろうな。見てて、ばかばかしくなる時もあるぜ」
「アリオスって、そういうところにも行ったことがあるの?」
興味深いと言った顔でアンジェリークは見上げてくる。興味は内容で、実際はあるわけだ。
「興味はあるのか?」
「ああいったところに行く人種には興味はないけど。どんなご馳走が出るかな…とかね。多分、私の数年分の食費が一晩で
費やされるんだろうな、とか?」
そういうと、アンジェリークはくすくす笑う。経済観念は思っていた以上に厳しいらしい。
「じゃぁ、行って見るか?」
「え?」
「興味あるんだろ?」
「そりゃあ、あるけど。どういうこと?」
事態の変化についていけず、アンジェリークはただ戸惑うだけ。
「まぁ、そのうちにな」
「変なの……」
そう言いながら、アンジェリークは慣れた手つきで二人分のコーヒーを入れる。夕食後の習慣だ。
「チャーリーの荷物の中にドレスがあっただろう? 着てみろよ」
「……これを飲んだら、ね」
「まぁ、いいさ」
コーヒーを飲み終えると、アンジェリークは着替えに行く。アリオスはコーヒーを飲みながら、軽くため息をつく。
(俺は何をしようとしている……)
自分の世界に確実にアンジェリークを巻き込もうとしている。気まぐれで拾った女のつもりだったが、アリオスの世界に関わって
くると、色々とややこしいことになるというのに。オリヴィエの言葉が今になって蘇ってくるのも問題だ。
「お待たせ……」
着替えたらしいアンジェリークが戻ってくる。オレンジ色のドレスはアンジェリークによく似合っていて、アリオスは一瞬息を
呑む。アンジェリークに気づかれないほどの間ではあったが。
「似合わないのなら、言いなさいよ」
「別に言ってないだろ?」
子供の挑発に乗っても仕方ないと思いつつ、言葉が出てこない。ならば、こういうときにアリオスが取れる手は一つだ。
「きゃ?」
強引に引き寄せて、唇をふさいで。何も答えられないように。身体をまさぐる。
「いやぁ……!」
どこをどうすれば、感じるのか知り尽くしてしまった身体に火をつけることは簡単で。簡単にアンジェリークの身体からは力が
抜けてしまう。
「嫌? もうこんなんだぜ?」
濡れた音をわざとらしく響かせれば、アンジェリークになすすべはない。
「あ、あぁ……」
陥落した身体を揺さぶって、アリオスは自分の思考を振り払う。獣に戻ってしまえば、思考などはいらない。ただの男と女に
戻るだけ。それだけでいい。今は……。
裏日記のあれにつながります。あれは再録しますね。はい。
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