「オリヴィエさん……?」
「ちょっと時間あるし、付き合ってよ」
そう言うと、オリヴィエはメークボックスから色々取り出す。
「綺麗な肌だよね。色も白いし。この色なんか映えるかも」
ウキウキと楽しそうに化粧道具を取り出し、オリヴィエはアンジェリークの顔に触れてゆく。
「あ、あの……」
「いいから、黙ってて!」
口を挟む隙もなくオリヴィエはアンジェリークに彩りを与えて行く。鏡に映し出される自分の変化をアンジェリークはぼんやりと
見つめていた。
「せっかくのいい素材なんだから、磨かないのはもったいないよ」
「はぁ……」
オリヴィエの手により、彩られた自分の顔をぼんやりと見つめる。何だか、おとなびていて。違う人間のようだ。
「オリヴィエさんって魔法使いみたい……」
思わず呟いてしまった言葉に、オリヴィエは軽く首を振る。
「魔法じゃないよ。これは必然さ。あんたのもつ素材の良さをを私は引き出しただけだしね」
「何だか、お料理みたい」
その発想に二人して、笑みを零す。
「確かにそうかもね。でも、私のメイクがなくても、あんたはいいオンナになれるんだから、さ。私が言うんだから、間違いはないよ」
コトン、と胸に言葉が降りて来る。店で客を相手にする時、適切なアドバイスをしているのを見ているが、客たちもまた同じように
魔法にかけられているのかもしれないと思った。
「ありがとうございます。正直言うと、お化粧ってよくわからなくて。チャーリーさんが持たせてくれた荷物の中にコスメ用品もあった
んですけど、使わないままだったんですよ」
そう言って、苦笑交じりにアンジェリークは肩を竦めた。
「駄目だよ。ちゃんとしなきゃ。勿体ないよ。まぁ、肌の相性もあるから、持っておいでよ。他に良いのがあれば、そっちにするから」
「い、いいですよ、そんな……」
「ああ、遠慮は要らないよ。大丈夫、払いはアリオスに回すから」
恐縮して、遠慮するアンジェリークにオリヴィエは手を振りながら、楽しそうに笑う。
「ま、近々あいつの方であんたに用があるから、その時にも頼まれるだろうし。その前に試しとこうとも思ってたし」
「用?」
「時期が近づいたら、あいつから頼まれるよ」
そう答えると、オリヴィエはメーク道具を片付けはじめた。
「さ、そろそろお昼からのお仕事、お仕事」
「あ、はい……」
やんわりとした笑顔で逸らされてしまえば、そこまでだ。結局、それ以上を聞くことは出来ないままに午後からの仕事に入る
アンジェリークであった。
ふふふ……。こういうシーンばかりなら、話が進むかなぁ……。
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