「……」
 どう足掻いても、逃れられない。かみ締めていた唇を解き、アンジェリークは瞳を閉じた。
 最初の口づけは柔らかな唇を確かめるように。それはひどく優しく感じる。気のせいなのか、そうでないのか。
「ん……」
 息苦しさから僅かに唇を開こうとした瞬間、口内にアリオスの舌が割って入って来る。
「ふ、ぅん……」
 逃げようとするアンジェリークの舌を搦め捕り、口内を蹂躙して行く。
 ガクガクとアンジェリークの膝が震え出す。力が抜けたその身体をアリオスはさらに引き寄せる。
「はぁ……」
 離れた唇の間に銀色の糸が引く。それがひどく淫らに感じられ、アンジェリークは頬を紅潮させた。
「何だよ、まだ慣れねえのか?」
 おかしそうに唇の端に笑みを浮かべるアリオスをアンジェリークはきつい視線で見上げる。快楽に潤み始めながらも、けっして
屈しようとはしない。こんなところも決して変わらない。
「いい瞳だが、いつまで持つかな?」
「や……」
 抵抗しようにも、力が入らない身体ではまったく意味がない。エプロンをくぐり抜けて、柔らかな膨らみを大きな掌が包み込む。
 ほどよく手の中に収まったそれをアリオスはゆっくりと形を楽しむように揉みはじめる。
「……」
 服の上からでもじんわりと広がる感覚に必死で唇を噛み締める。そうしなければ、確実に自分の中から生まれる熱に神経が
蝕まれる。いや、そう思った時点ではもう遅かったのかもしれない。それでも、アンジェリークは抗わずにはいられなかった。
「身体は素直だよな、ほら」
「……!」
 服の上から硬くなり始めた頂を摘まれると、ビクリと身体をしならせる。それでも堪えようとするアンジェリークの表情を伺い
ながら、アリオスは右手を下に滑らせた。
「や……」
 左手は胸への愛撫をそのままに、下に下りた右手はスカートの裾から入り込みふとももから足の付け根までをなぞるように
何度も触れて来る。微妙なその動きにやがてアンジェリークの足がもじもじと動き出す。
「どうしたんだよ?」
 意地悪く囁かれ、アンジェリークは耳まで真っ赤になる。自分の意思を離れて、勝手に反応する身体。もっと触れられたくて、
もっと強い刺激を身体が求めて……。
「は、ぁ……」
 もどかしさに身を焦がしそうだ。
「んっ!」
 長い指が足の付け根から、布越しに中心に触れて来る。
「あっ、や……!」
 身体中に電流が走る。求めていた感覚なのだ、と嫌でも自覚させられる。認めたくない筈なのに、だ。
「何だよ、濡れてるじゃねえか」
 耳元であらかさまに羞恥を煽る言葉を投げ付ける。そうすることで、アリオスに向けるアンジェリークのきつい眼差しをとても
気に入っていた。
(もし、チャーリーに引き取られていたら、あいつはこの眼差しを知ることはなかったかも、な……)
 アンジェリークを気に入り、買うという形で手元に置こうとしていた彼だ。きっと大切に扱っていただろう。アリオスがするように、
アンジェリークを挑発し、その反応を楽しむことなどはしないだろう。
 その眼差しの強さが、いつまでも染まり切らない反応がアリオスを捕らえて離さない。無意識の誘惑。
 ある意味、<商品>として、出される事なく手に入れられたことは好運だったことかも知れない。慣れた商売女にはないこの
姿こそがアリオスをひきつけるのだから。
 クチュリ……。布を通り越して、入ってくる長い指先。それはすんなりとアンジェリークの中に入り込んでくる。嫌でも耳に入る
濡れた音。自分が感じていることを嫌が上にも自覚させられることに嫌悪感を覚えながらも、指一本動かせない。
「ちゃんと感じてるじゃねえか……」
 耳朶を甘く噛まれ、囁かれる、そんなことにすら、身体の熱を煽られる。
「あ、あぁ……」
 噛み締めていた筈の唇はいつしか解け、とめどなく声が零れ続ける。
 身体が熱い。熱を帯びた身体は熱が増しこそすれ、冷めることはないままに。
「は……、あぁ!」
 アリオスの指がある一点を責めたとたんに、大きくアンジェリークの背がしなる。そのまま、ずるずると力が抜けてゆく身体を
アリオスはしっかりと支えた。
「まだまだだぜ?」
 そう言って、アリオスが濡れた指をアンジェリークに見せ付けると、羞恥心に顔を背けながら、アリオスの服の裾を掴んだ。
「どうした?」
「お願い、ここじゃ……」
 アンジェリークのその言葉にアリオスは満足に笑うと、アンジェリークを抱き上げた。
「最初から素直だとこちらも楽なんだがな」
 半分は本音で半分は嘘だ。アンジェリークがこうだからこそ楽しめるのだ。快楽に屈服する瞬間のアンジェリークは商売女や
遊びで付き合う女では味わえない何かがある。それを引き出したくて、無理を強いるのだ。
 どさっと、ベッドに投げ出されると、アリオスは中途半端に脱げかかっていたアンジェリークの服を脱がせた。
「あ、んっ!」
 きつめに首筋に口付けれは、くっきりと紅い跡が残る。まるで、烙印のようだ。そんな事を考えて、笑みをこぼす。それはとても
深く、暗い笑みであった。

あはは……。1ヶ月以上放置して、続きがこれ? (乾いた笑い)。あう〜。

|| <絶対的関係
 || <22> || <24> ||