ひんやりと冷たいものが頬に当てられている。それをとても心地よく思った。次に唇を生暖かい何かにふさがれる。
息苦しさに己を捩ろうとしたが、冷たい何かが流れ込んでくるのに気づき、そのまま受け入れる。とても、喉が渇いていた。
少しでも水分を求めようと、身体が本能で動く。流れ込んでくるのは冷たい水。乾いた喉を潤すをそれをできるだけ取り込む
ために唇を広げて。より多くを受け入れようとする。
(水って、こんなに美味しかったんだ……)
「ん……」
一度、唇が離れる。まだ、完全に潤っていない喉の渇きを癒したくて、無意識にすがりつく。
「待ってろ、慌てなくても、まだあるからな……」
耳元に囁かれるテノールが心地よくて。次の水を待つ。
「ほら、口を開けてみろ……」
言われるままに口を開くと、再び冷たい何かが口の中に冷たい何かが流れ込んでくる。だが、それは望んでいたものでは
なかった。
「ぐふ…っ……!」
喉の奥に焼き付くような感覚。冷たいことは冷たいが水ではないそれを身体は受け止め切れず、むせこんでしまう。喉が
焼け付くような熱さだけが体に残った。
「勿体ないことしてんなよ。高かったんだぜ、この酒……」
「え……?」
意識が一気に浮上する。ゆっくりと瞳を開けて行く。すると、そこにはこの1日ですっかり見慣れた人物の顔。
「アリオス……?」
「よう、お姫さま。ようやくお目覚めか?」
「私……?」
ほのかな石鹸の香りと、まだ乾ききっていない髪。バスタオルを巻き付けられたままの身体。
(そうだ、私、お風呂で……)
髪が乾ききっていないということはまだそれほど時間がたっていないということ。アンジェリークはアリオスに視線をむけた。
「アリオスが運んでくれたの?」
「良すぎて、気を失ったおまえが自分で動けるか?」
「――!」
わざと羞恥心を煽るような言い方をすると、予想通りに顔を紅潮させる。少女らしい羞恥心は消える事はないらしい。それが
また、アリオスを楽しませるのだ。初々しさというか、潔癖さというか。どちらでもいいことではあるのだが。
「ほら、飲めよ。気付け薬だ」
「気付け薬……?」
口元に持ってこられるのは琥珀色の液体と氷が入ったグラス。
「さっきも、これで目が覚めただろう?」
「で、でも。これって、お酒じゃ……」
喉が渇いてはいるが、アルコールはほとんど飲んだことはない。しかも、先程の喉が焼け付くような感覚を覚えさせたもの
なら、なおさら避けたいところ。
「私、お酒なんか飲めない……」
「何だよ、遠慮するなよ」
無理やりグラスを口元に当てられ、口を開かされる。だが、流れ込んでくる液体を身体は受け止める事を拒否し、ほとんとが
飲みきれずにこぼれてしまう。
「冷たい……」
喉もとを滑り落ちたり、直接零れ落ちたり。琥珀色の液体はアンジェリークの身体のあらゆる場所を湿らせてしまう。
「勿体ねぇな……」
「きゃっ!」
琥珀色の液体の軌跡を追って、アリオスの唇が動く。丁寧に舐め取ってゆく舌の動きは身体の中にくすぶる熱を煽っている
かのようで。
「やめて……」
あの感覚が蘇る事が怖い。だが、アリオスの動きは止まる事はなく。少女の身体を唯一守るバスタオルにまで伸びてくる。
「嫌っ!」
「綺麗にしてやってんだぜ? 風呂に入ったのに、また汚しちまった子供の後始末なんだからな」
「嘘、そんなの……」
身をよじって、逃れようとするが、男の力にかなうはずもなく、結局はされるがまま。琥珀の液体のこぼれたところ全てを
舐め取ってゆく。
「やっ……」
抗う声は艶やかに染まり、意味をなさない。一度、覚えた感覚は水を吸う砂のように少女の中に吸収されてゆく。そして、
それは少女をより艶やかに染め上げるのだ。
「ここも零れてるな……」
「嘘、そんなとこ……」
力の入らない足は大きく開かれる。そのまま、アリオスの頭がそこに伏せられる。
「い、やぁ……!」
ピチャリ……。水音がそこから響くのにはさほど時間がかからなかった……。
iいいのかなぁ、こんなのばっかりで……。
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