シャワーの水音が聞こえる……。
 目が覚めると、すぐに目に入ったものは見慣れた自分の部屋の天井ではなく、見知らぬそれであった。
「……」
 朝は弱い方ではないが、妙に気怠くて。未だに目覚めきっていない身体は休息を求めている。
 うとうとと、まどろみのままに、まぶたが閉じそうになるのに逆らえない。
「よう、起きたか?」
「?!」
 だが、降ってきた声に急激に意識が覚醒する。
「お目覚めか、お姫さま?」
「あ……」
 目を開けると、間近にアリオスの顔がある。シャワーを浴びたばかりの髪はまだ乾いてはおらず、水滴がついたまま。
 急激に意識が覚醒する。アリオスの髪から落ちてくる水滴にこれは夢ではないと言うことを再認識させられて、顔か赤く
なってくる。
「何だよ? もう今更、照れることもないだろ?」
「……」
 揶揄するような口調。もちろん、わかってて言っている。身の置き所がなくて、アンジェリークはシーツにくるまってしまう。
「起きられるんなら、シャワーでも浴びたらどうだ? ほら」
 バサッと無造作にバスローブが投げられる。そして、タオルで無造作に髪を拭いながら、アリオスは部屋を出た。
(一応、気を遣ってくれたのよね……)
 アリオスが部屋を出たことを確認すると、アンジェリークは気怠い身体を起こそうとするが、身体の最奥の痛みに顔を
しかめる。身体中につけられた真紅の痕に改めて昨夜の行為を思い起こされ、複雑な気持ちになる。
(あの人と、しちゃったんだよね……)
 昨晩の自分のことは思い出すだけでも、頬が熱くなる。随分と恥ずかしい姿を見られてしまったのだから。身体を売ると
決めた以上、覚悟はしていたが、あんなに身体が熱くなって、自分が自分でなくなるような感覚だとは思わなかった。
(アリオスは慣れてる感じだったけど……)
 よく考えなくても、アリオスの手のひらの上で動かされていたようなものだ。彼にされるがままに乱され、自分でも信じ
られない声を上げさせられて。
(私、どうなっちゃうのかな……)
 アリオスに買われたのだから、これからも彼に抱かれるのだろう。知識と実践はあまりにも違い過ぎて。今更ながらに
先行きが不安になる。
「シャワー浴びよ……」
 このまま堂々巡りになりそうな思考を切り替えるのなら、シャワーを浴びるのがちょうどいい。身体に残された昨日の
名残を落とせるような気がする。
 無造作に置かれたままのバスローブに袖を通すと、ベッドから降りようと足を床につける。いや、つけたつもりだった。
「きゃ……!」
 途端、足に力が入らず、バランスを崩してよろめいてしまうともう時すでに遅く。
 ガタン! 派手な音を立てて、転んでしまう。
「おい、どうした?」
 すぐさまにアリオスが戻ってくる。
「何やってんだ?」
 バスローブをはだけさせて、床に座り込んでいるアンジェリークを呆れたように見つめるアリオスにアンジェリークは
ばつが悪そうな顔をする。
「あ、その…足に力が入らなくて……」
「ああ、成程な……」
 カーッと顔を赤らめて告げるその様子にもどこか新鮮なものを感じる。処女は厄介だという言葉もこの少女に関しては
通用しないようだ。見ているだけで楽しませてくれる。
「仕方ねぇな」
「え?!」
 そう告げるや否や、アリオスはアンジェリークを抱き上げた。
「ちょ、ちょっと?」
「腰がたたねえんだろ? 初めてのおまえに無理をさせた責任もあるからな。風呂くらいになら、入れてやるよ」
「やだ、一人で……」
 ジタバタ暴れだそうとするアンジェリークにかまわず、アリオスはアンジェリークを運んでゆく。
「降ろしてよ!」
「暴れると、落とすぞ!」
「良いわよ、それで!」
 あくまでも、アリオスに運ばれる事を拒んでいる。落とされるという恐怖心より、羞恥心の方が大きいらしい。
 呆れたようにその様子をうかがいながら、ふと思いついた意地悪な方法を試してみる事にする。
「じゃあ、おまえが本当に動けなくなるまでしてやろうか?」
「な……?!」
 耳朶を甘くかまれて告げられた言葉に、何が、だなんて聞けなかった。ゾクリとした感覚が背中に上る。
「俺なら、かまわねえぜ?」
「……!」
 ペロリ、とはだけたバスローブに隙間に舌を這わせられる。
「判ったわよ……」
 きゅっと唇をかみ締めると、アンジェリークは大人しくなる。それを満足をそうに見つめると、アリオスは少女をバスルーム
へと運んでいった。

 頑張ったよ、ほめて〜。いや、何も言わないで……。

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