「いや、ぁ……」
 直接触れられる感覚に抗いの声をあげる。だが、アンジェリークはまだ、気付いていない。その声がどこまでも甘く聞こえて
いることを、それが意味するものの正体を……。
「ん…はぁ……!」
 柔らかな膨らみはアリオスの手で幾度も形を変えられ、淡く色づく蕾は堅く張り詰め、気紛れのように時折、男性のものに
しては優美な指先に摘まれ、指の腹で擦られる。もう片方の蕾はすでに濡れたものに包まれ、強く吸われたり、挟まれたり、
さらに濡れている何かにつつかれたり。それが何であるかとは、考えられない。いや、考える余裕などなくて。ただ与えられる
感覚に振り回される。
「あ、ふ…ぁ」
 声にならない声。いつしか首筋から鎖骨にかけ、鮮やかな真紅の花が咲き誇っている。身体中が甘やかな毒に支配され、
言うことを聞かなくて。
(なんか…ヘンになってる……)
 身体の最奥に訪れてた変化にさらに戸惑う。
自分を支配しようとするこの感覚に抗えない、溺れてしまうことが怖い。ただ、それだけが頭を支配する。
「おいおい、まだ最後いってないっていうのに」
 どこか楽しそうな声で告げると、無意識に身を捩り、逃げかけた少女の足首を掴む。そして、そのまま自分の方に引き
寄せる。
「きゃあ!」
 咄嗟のことで、されるがままになるしかなくて。片足はアリオスに掴まれたまま、もう片方は膝を立てている状態。未だに
身につけているスカートは半分以上めくりあがり、その奥の秘密を僅かに覗かせている。それはひどく嗜虐心を煽りたてる。
「え?」
 いきなりスカートに伸びたアリオスの手に逃げ出そうとするが、掴まれたままの足ではどうすることもできない。
「暴れれば、暴れるだけ凄い格好になってるぜ? それとも、俺を誘ってんのか? ようやく買われた女らしくなってるじゃ
ねえか」
「?!」
 指摘されて初めて、暴れたためにさらにスカートがめくり上がっていることに気付く。咄嗟に足を閉じようとしても、足を
掴まれたままの状態ではどうしようもなくて、固まったように動かなくなる。
「何だよ。もっと楽しませてくれるんじゃなかったのか?」
 おとなしくなったアンジェリークを揶揄するように笑う。
「……!」
 それが悔しくて、唇を噛み締めて睨みつけるが、その態度こそがアリオスを楽しませるなどとは、全く気づいていない。
どんなに強く、きついまなざしも快楽に彩られてしまえば、男を誘う極上の品だということを……。
(確かに仕込み次第では元は十分に取れそうだな……)
 乾いた唇を嘗めると、そのままアンジェリークに口づける。何処をどうすれば、力が抜けるかなどはわかりきってしまった
唇に口付け、動き回る。
「ん…ふぅ……」
 スカートのファスナーを下ろしてしまうと、本人と意図とは裏腹に身じろぐ身体から自然とずり下がってゆく。膝した近くまで
降りてくると、それを取り上げてしまう。もう、身を守るものは一つしかない。アリオスはもはや力の入らないアンジェリークの
足を開き、自分の身体を割り込ませる。
「い、いや……」
 自分でも触れたことのない最奥に布越しとはいえ、男の指に触れられ、アンジェリークは更なる強硬に陥る。だが、そこは
布越しとはいえ、アリオスの指に湿った感触を与える。
「どうやら、身体はちゃんと反応してるな……」
「やだ、何でそんな事……」
 羞恥心に震える姿がそそるから…と言えば、この少女はどう反応するだろうか。昏い笑みを浮かべ、アリオスは少女を追い
詰める手を止めようとはしない。むしろ、さらに乱れさせて、その反応を楽しんでいる。
 クチュリ……。布と最奥の隙間から入り込んだ指が奇妙な水音を立てる。アリオスが指を動かせば動かすほど、その音は
淫らに大きくなってゆく。
「キャ…ぁ……!」
 身体と心がバラバラになる感覚に追い詰められる。
「ねぇ…も……」
 快楽に追い詰められ、涙にまみれた顔でアリオスに縋りつく。
「どうした?」
 涼しげな声で尋ねるアリオスにもうどうすることもできなくて。
「も、わかん…な、い……」
 無意識にも限界が近いことを訴える。快楽に染まるその姿にニヤリと笑うと、アリオスはアンジェリークの身体を守っていた
最後の砦を取り払う。ようやく生まれたままの姿になったアンジェリークをアリオスは静かに見下ろす。快楽に染まるその身体
は淡く色づき、勝ち気な
瞳は艶やかな色を映している。無意識のうちに全身でアリオスを誘っている。そこにはもう勝ち気なだけの少女はいない。匂い
立つような美しさで男を誘う女の姿だけ。
「待ってな、楽にしてやるよ……」
 クチュ! より一層の大きな水音が部屋に響く。アリオスの指が一層アンジェリークを攻め立てる。
「い、いやぁ……!」
 頂点まで、意識が駆け上がってゆく。その先がわからなくて、恐慌状態になる。頭の中で何かが弾いて、真っ白になって――。
そして、ゆっくりと沈んでゆく……。
「はぁ……」
 激しく息をついて、ぼんやりとアリオスを見上げる。身体が熱くて、しびれたような感覚。もう、手足の一本も思うようには動か
せない。アリオスによって変わってゆく、変えられて
しまった身体。このまま、まどろみに身をゆだねたい、そんなことすら思ってしまう。
「何やってんだ。まだ夜は長いぜ?」
「あ、ん……」
 身体中が敏感になっている。少し触れられただけでも身体の中にくすぶってる炎が燃え出そうとしている。
「まだ、俺も楽しませてもらってないから、な……」
 そう告げると、アンジェリークの足をさらに広げる。
「あ……」
 最奥の入り口に感じる熱いものにビクン…と、身体を震わせる。脅えたように見上げる瞳。だが、今更、止められるはずも
ない。誰もがいつかは経験する事だ。ゆっくりと、アンジェリークの中に侵入していった。
「痛い……!」
「力を入れるな……」
「ム、無理よ……」
 初めての痛みに涙をポロポロこぼす。このまま進めてもいいが、セックスに対して、臆病になられても困る。自分の色に染め
させたくなる少女なのだから。
「アンジェ……」
 何度も優しいキスを与え、身体のこわばりを解いてゆく。そして、少女は嬌声を上げ、反応した箇所を愛撫し、快楽を少し
ずつ与える。
「ん、ふぅ……」
 こわばりが解けると、ゆっくりとアリオスは動いてゆく。決して少女に痛みだけを与えないように。快楽も添えて。
「あ、ああ――!」
 痛みと自分の中に生まれる不可思議な感覚の板ばさみになって。身体が壊れてしまいそうだ。それなのに、それが嫌じゃ
ない。こんなに自分が自分でなくなってるというのに。
「――!!」
 熱い何かが駆け巡る。頭が再び真っ白になる。それだけじゃない。熱さに溶けてしまいそうになって。浮いているのか、沈んで
いるのか。自分でもわからない。
「も、駄目……」
 何もかもが爆発する。そして、ばらばらになる……。あとは砕けたかけらになって、その残骸を遺すだけ……。
「あ……」
 身体の中で熱い何かが開放された事に気づきつつ、アンジェリークは今度こそ、意識を手放した。

「チャーリーの野郎に、感謝しなきゃいけないかもな……」
 ウォッカのロックの入ったグラスを片手に満足げに笑う。心だけでなく、身体の方も楽しめそうだ。自分を捕らえたあの強い
瞳が屈服する姿は今見てもゾクゾクする。
「ま、先は長い……」
 その言葉はアンジェリークに対してなのか、それとも自分自身に対してなのか……。その答えは彼の中だけにあった。

 頑張ったよ、ほめて〜。いや、何も言わないで……。

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