運ばれたのはベッドルーム。ブラインドを下ろしてあるので、この時間でも、薄暗い。まだ、目が慣れなくて、アリオスの
顔が見えにくい。そんなことに何故かホッとする。
「降ろすぜ?」
 そう告げると、アリオスはアンジェリークをベッドに横たえる。ギシッとあまり上等とは言えないスプリングがきしむ。
「あ……」
 途端にアリオスが覆い被さって、大きな手が華奢な手首を押さえつける。もう片方の手は顎を捕らえる。
「そう、堅くなるな。別に取って食うわけじゃねぇんだから。とりあえずは俺に身を任せときゃいい」
「そういうものなの?」
 こういう状況なのにもかかわらず、きょとんとした表情で尋ねてくる。それが先程までの勝ち気な性格とたまらなくアン
バランスで、アリオスを楽しませる。確かに、染め甲斐はありそうだ。勝ち気な瞳が快楽の色を映す瞬間を見たり、何も
知らない真っ白な身体に色々と覚えさせたり……。
「まぁ、踏んでる場数が違うから、な」
「それって……」
「いいから、俺に任せてろ」
 それ以上の会話は必要ないとばかりに、唇を重ねてくる。恐る恐るではあるが、アンジェリークが少しずつ応え始める。
柔らかな口内に入り込むと、拙いながらに招き入れ、アリオスの動きに合わせようとする。アリオスの舌はアンジェリークの
それを絡みとり、思うままに蹂躙してゆく。
「ん、んぅ……」
 息苦しさとは違った感覚がアンジェリークの中から生まれてくる。やがて、どちらかのものともつかぬ唇の端から零れ
、顎から首筋に流れ落ちる。
「ぁ……」
 唇が離れると、零れ落ちた液体を追うかのように、アリオスの唇がさ迷い始める。首筋にその感触を覚えた時、アンジェ
リークの身体が竦んだ。
「は、ぁ……」
 羽のように軽く触れたかと思えば、きつく吸われたり。白い首筋に幾つもの紅い花が咲き始める。やがて、首から耳朶へ
唇が移ると、アンジェリークの身体が細かく震える。形のいいそれを軽く噛んだり、舌を這わせたり。耳元から、直接聞こえる
アリオスの息遣いにすら、敏感に反応する。
「や、何か、変……」
 何も彼もが初めてだから、こんな風に変わってゆく、変えられてゆくことに今さらながらに戸惑いを感じる。知識としては
知っていたし、身体を売ると決めた以上、覚悟はしているはずだった。だが、現実は甘やかにアンジェリークの身体を蝕んで
ゆく。じわじわと身体の中の熱が上がってゆく。自分ではどうしようもできなくて。救いを求めるかのように手を伸ばして、アリ
オスのシャツの裾を掴む。
「おいおい、これくらいで音を上げていたら、身が持たないぜ?」
 楽しげな声でそう囁いて、唇の端を微かにあげて笑う。
「あっ、!」
 アリオスの手がアンジェリークの胸を包み込む。弾力に満ちたそれは服の上からでも、アリオスの手が動くのに合わせて
形を変えるのがわかる。
「ん、っっ……!」
 指がある一点を掠める度に身体が敏感に反応する。艶めいた声と表情を時折見せる。紛れもなく、それは“女”の顔。何も
知らなくても、自然と身体が男を煽る術を覚えるのだ。
「イイ顔になり始めた、な」
 アリオスの指がブラウスのボタンに触れると、反射的にアンジェリークの身体が逃げようとする。だが、一度捕らわれた
獲物が簡単に逃げられるはずがない。
「ん、んん……」
 吐息ごと奪うような口づけで全身から力が抜けてゆく。それを見逃すことなく、アンジェリークの唇を塞いだまま、器用に
ボタンを外してゆくと、白い素肌があらわになる。そのまま、アンジェリークの背中に手を回し、背中を浮かせると胸を戒めの
ホックを外してしまう。
「え?」
 不意に上半身が浮き上がったかと思うと、スルリ、とブラウスが脱がされ、胸の砦も奪われる。
「やだ、見ないで!」
 咄嗟に隠そうとする腕を掴んでしまうと、頭の上で押さえつけてしまう。
「隠すなよ。勿体ねえ」
 灯がついてないのが、せめてもの救いだと思う。今ですら、こんなに恥ずかしいのだ。灯がついていたら、羞恥に堪え
きれなかっただろう。
 だが、半裸を晒し、羞恥に震えるアンジェリークの姿はアリオスをより楽しませる。暗いところでも、目が利くとつげたら、
どんな顔をするだろうか。そんな悪戯心が生まれなくはないが、何も彼もが初めての少女には酷な気もして。
(ま、このままでも、十分楽しめるしな)
 まだ何も知らない真っ白な肢体。つくべきところは十分すぎるほどについていて、目にも楽しませてくれる。
「まだ、始まったばかりだぜ?」
 そう告げると、アリオスはアンジェリークの胸に顔を埋めた。

 だから、裏は苦手なんだって……。

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