「きゃ!」
 少女の声でルヴァは意識を覚醒される。ここは森の湖の木陰。どうやら、眠っていたらしい。
(夢…だったんですね……。また……。)
 けれど…いつも目覚めたときとは違い、暖かな感覚だけがルヴァの心に残っている。
「あ…あの……。ルヴァ様……。」
 困ったような少女の声に顔を上げる。目覚めたばかりで思考が働いていないのと、逆光で少女の
姿を最初は認識できなかったルヴァだが……。
「ア…アンジェリーク……!」
「あ…お目覚めになったんですね…ルヴァ様……。」
 真赤になって、困ったような表情を浮かべるアンジェリーク。ルヴァは思考を巡らせる。
「あ……。す…すみません……! わ、私…あの……。」
 寝惚けていたのか、しっかりとアンジェリークの手を握っている自分に気づき、ルヴァは慌てて
手を離す。
「あ…あの……。すみません、私…寝惚けていたらしい…ですね……。嫌な思いさせてたら、あ、
嫌ですよね、どうもすみません……。」
 必死で誤ってくるルヴァにアンジェリークも慌てて首を振る。
「そんな。嫌なんかじゃ……。ただ、びっくりしただけです。そんなふうに言わないでください
……。」
 その言葉にようやくルヴァも落ち着きを取り戻す。
「はぁ…すみません……。どうも、陽射がいいので、眠っていたみたいで……」
「いえ……。ディア様のお茶会なのにお姿が見えないので、探しにきたんです」
「ああ…そういえば、そうでしたね……。申し訳ありません、わざわざ……」
「そんなこと。それより、早く行きましょう」
 そう言って、アンジェリークは立ち上がる。歩き出そうとするアンジェリークに突然、奇妙な
既視感を感じる。
「あ…アンジェリーク!」
「はい?」
 くるりとアンジェリークが振り返る。それは夢の中の少女と重なって。ルヴァの心の中に夢の
少女の姿がはっきりと蘇る。
「あ……。」
「どうか…されました、ルヴァ様?」
 不思議そうに見つめてくるアンジェリーク。まっすぐなエメラルドグリーンの丸い瞳。
「いえ…なんでもないんです……。行きましょうか。」
「はい!」
 明るい笑顔。その笑顔にルヴァは満たされる。
(あなた…だったんですね…アンジェリーク……。)
 夢の中の不思議な少女の姿がアンジェリークの姿と重なる。ほんの少し、勇気を出して走り出
せば…いつもいつも駈けていってしまう彼女は振り向き、立ち止まってくれた。それが何を意味
するのかは、ルヴァには分からない。今、ここに、アンジェリークがいてくれるだけで、それで
いいのだから……。

やっと、糸がほつれました。ルヴァ様、良かったねぇ。

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