アンジェリークの仕事は相変わらず順調だ。CDの売り上げも上場だし、CMやTV出演にも引っ張り箱である。仕事が
忙しくても光り輝いているアンジェリークの姿は誰もが魅了する。
「アンジェリーク、話がある」
 そんな中、事務所の社長に呼ばれて、アンジェリークは社長の下に赴いた。
「……なんですか?」
「アルヴィース財閥の総帥とはうまくいっているのか?」
「ええ。それなりには」
 また、その話かとアンジェリークはうんざりとした表情を隠さない。子とあるごとに、レヴィアスに取り入れとうるさくて
仕方がない。大財閥の総帥の後ろ盾があれば、アンジェリークはさらに売り出すことができると言うのだが、事務所の
力をさらに大きくすることと業界における勢力の拡大を図ってのことだ。
「それなりには、は十分だ。お前もより高いステージを目指すのだろう?」
「……ちゃんと仕事をしてるじゃない。ちゃんと歌えば、それなりの成果が見えてきたじゃない?!」
 アイドルとしての可愛さだけではなく、歌唱力でも評価されている。
「おまえがこの業界で歌えているのは誰のおかげだと思っている?」
「……」
「お前のためでもあるんだ。さらにステップアップを目指すのならな」
 勝手な言い分だ。それでも反論できないのは、歌いたくて、ずっと歯を食いしばってきて。汚れても、心だけは汚れ
ないと自分に言い聞かせてきた。自分の歌声を、いろんな人たちに届けたかったから。
「アルヴィース財閥の総帥を誘惑してこい。あの方なら、スキャンダルにもならないし、お前の何よりの後ろ盾になる
からな」
 それは最終通告だった。アンジェリークは返事をすることもなく、ただ唇を強くかみ締めて。それが今できる精一杯の
抵抗だった。


「アンジェリーク、今日は僕が送っていくよ」
「いいわよ。自分で行けるから」
 いつもは自分ひとりでレヴィアスの元に赴くことを知っているはずのマネージャーがれヴぁ明日の元まで送ると言って
来る。何かあると踏むしかない。案の定、窓の外には写真雑誌の記者らしき姿。おそらくはアンジェリークがレヴィアスの
元に出入りしているという情報をリークしているのだろう。明日発売の週刊誌に大々的に報じられる
ように。
(とんだ茶番話だわ)
 どんなことがあっても、歌うためにがんばってきた。歌うことが一番だった。けれど、それ以上に大切なものをアンジェ
リークは見つけてしまった。
「つまらない小細工はしないで。でないと、あたしがレヴィアスに本当のコト話すわよ」
「まさか、歌いたいんだろう?」
 アンジェリークの言葉にマネージャーは鼻で笑う。子供のいうことだとたかをくくって。アンジェリークは無言で携帯を
取り出した。
「カインさんですか? 今から、向かいます。ただ、私にハエがついてくると思いますから、申し訳ありませんが、対策を
取っていただけますか?」
「アンジェ……」
 携帯を取り上げようとするマネージャーにアンジェリークは画面がついていない携帯の画面を突きつける。
「脅しじゃすまないわよ」
「……わかった。記者には美味くごまかしを入れるさ。社長にも」
「当然だわ」
 冷ややかな視線をマネージャーに向けて、アンジェリークは目立たない格好に着替え、事務所を後にした。


急展開です。ようやく、終わりが見えてきました。


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