そして、翌日。この日はオフにするとの言葉どおりにアンジェリークは自宅のマンションで久々の休日を過ごしていた。
もっとも、何をするということもなく。だらだらとTVを見たりして。
「レヴィアスのとこに遊びに行こうかな……」
 ちょくちょく行くと、迷惑になるかもしれないという遠慮はとうの昔に消えている。迷惑なら迷惑だとレヴィアスがはっきり
いってくれるであろう。レヴィアスとすごす時間は楽しい。それこそ、機能の男などとは比べ物にならない。
「何か、簡単なお菓子でも作ろうかな」
 贅を尽くし、凝りに凝ったお菓子は難しいけれど。クッキーなら何とかなるかもしれない。そういうことは嫌いじゃない。決めて
しまえば、後は冷蔵庫をのぞいて、足りないものを買いに行くだけだ。鼻歌を歌いながら、キッチンに行こうとすると、携帯の
着信メロディーが聞こえてきた。
「はい、アンジェリークですけど?」
『あ、アンジェか? 僕だけど……』
「マネージャー? 何? 急な仕事?」
 昨日のことはホテルを出た後に連絡してある。プロデューサーから連絡があったのか、向こうの勝手な都合ということなので、
マネージャーも納得してくれたようだ。もうオフにしてしまったのだから、ゆっくり休んでくれてもいいとも行ってくれたのに。
『仕事じゃないんだけどね。…その。とにかく事務所に来てくれないか? 話はそれからだから』
「……? わかりました」
 理由はよくわからないけれど、今日のオフはなくなってしまうことを覚悟しなければならないようだ。ため息をついて、アンジェ
リークは家を出て、タクシーに乗り込んだ。


 事務所につくと、社長とマネージャーが待ち構えていた。あまりいい予感がしないので、それを顔に出すと、マネージャーは
申し訳なさそうに肩をすくめた。最も、そんなことをされたって、ありがたくも何ともない。
「……で、何の用なわけ? 今日はオフだって、マネージャーにも聞いたけど」
「決まってるだろう? 昨日の兼だ」
 社長の返事に嫌な予感は確信に変わる。
「昨日は申し訳なかったってね。改めて、今日はどうだ、とね。お前もオフだし、ちょうどいいかと思って返事しておいた」
「ああ、そう」
 何のことはない。昨日の件はまだ片付いていなかったということだ。
「服は用意してある。今から、行ってこい」
「ほら、アンジェリーク」
 マネージャーや社長にうんざりしながらも、アンジェリークはのろのろと着替えに行こうとする。どうせ、逃げられはしないのだ。
嫌なことは早く終わらせるに限る。部屋を出ようとした途端、電話のベルがけたたましくなった。
「はい、どちら……。って、? は、はい。元気にしております」
 電話を受けた途端にかしこまった様子になった社長にマネージャーもアンジェリークもキョトンとする。何度も電話に向かって、
お辞儀をすると、社長は電話を切った。
「アンジェ。予定は変更だ。アルヴィース財閥の総帥がじきじきにお前に会いたいそうだ」
「レヴィアスさんが?」
 さすがに社長やマネージャーの前ではレヴィアスを呼び捨てには出来ず、“さん”づけにしている。
「いいの? 次のアルバムの話は……」
「ばか。ここでお前が行かなくて、機嫌を損ねられたら困るだろう。うまく言ってやるさ」
 社長の言葉にアンジェリークは激しい嫌悪感を感じる。レヴィアスの方が利用価値があるから、だ。そんなことで彼を利用したい
とはアンジェリークは思ってもいないのに。
「いいか、うまくやれよ」
「……行ってきます」
 社長の言うことはどうでもいい。ただ、会いに行こうと思ってた相手に会えることが嬉しい。そのことだけを考えて、アンジェリークは
事務所を後にした。


ふふふ、次にレヴィアスが出てきます〜。大人の貫禄を出せるかなぁ……。


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