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レコーディング当日、CMに使用される曲のレコーディングにはアルヴィース財閥の人間も立ち会うことになった。 「僕たちが聞いて気に入らなければ、気に入るまで歌ってもらいますから。それで駄目だったら、降りてもらうことも 考えてください」 ジョヴァンニと名乗る青年はそう告げて、不遜な笑みを浮かべた。女性と見まがうほどの綺麗な顔立ちではあるが、 腹のそこでは何を考えているのか。そんなことを考えてしまう。 「それがレヴィアス様の意思だって言えば、そこのお嬢さんには伝わるって聞いたんでね」 見定めるようにアンジェリークを見つめる瞳。アンジェリークはたじろぎもせずに見詰め返す。周囲のスタッフやプロ デューサーはおろおろしていて、あまりにも対照的だ。 「ええ。聞いているわ。気に入られるように努力はしない。でも、認めさせてみせるわ」 「媚は売らないってことか。……強気なお嬢さんだ。確かにレヴィアス様が面白いといった意味がわかるよ」 クスクスと笑う。だが、その瞳は本当の意味では笑っていない。 「まぁ、それくらいの気の強さなら、期待してもいいのかな? 言っとくけど、あの車は僕たちが昼夜を惜しまずに開発 したものなんだ。生半可な歌声では満足しないからね」 そう告げると、ジョヴァンニはスタジオの椅子にふんぞり返る。部外者とはいえ、アルヴィース財閥の総帥、レヴィアスの 直接の部下の一人である。追い出すことも、意見することもできない。 「皆さん、始めましょうよ!」 スタッフたちにアンジェリークは声をかける。誰もが呑まれてしまっている中で、アンジェリークだけが挑むような瞳を 捨てていない。その瞳にスタッフたちもようやく気力を取り戻す。 「じゃ、アンジェちゃん、準備よろしく」 「はい!」 スタッフたちとアンジェリークの真剣勝負がやがて始まった。 「へぇ……」 聞こえてくる歌声にジョヴァンニは思わず感嘆のため息を漏らす。アイドルが歌うと言うことで嵩をくくっていた部分も あった。レヴィアスとは違い、TVやラジオなども聞いている。アンジェリーク・コレットが自分たちの作った車のCMソングを 歌うと多少の不満も感じたのだ。もちろん、腹の中で思うだけではなく、実際にレヴィアスに直談判もした。 『アイドルとタイアップだなんて、僕は嫌だからね! どういうつもりなのかは知りませんけど』 『ならば、お前が直で聞いてみろ』 ジョヴァンニの抗議にレヴィアスはただその一言だけを告げた。カイン曰く、珍しくレヴィアスが気に入った人間だと言う。 たかが、アイドルのどこがいいのか、そして、レヴィアスが何を気に入ったのかがジョヴァンニの好奇心を刺激した。そして、 今に至るわけである。 (可愛いうちはアイドルにとどめて置こうってやつかぁ……) 今までの曲とは気合がかなり違う。胸に迫ってくる勢いがある。そして、心地よい声。天使の歌声と言うのはこういうこと なのだろう。透明感のある歌声であるのに、しっかり心に根付く。 何度も何度も。歌えば歌うほどに深まる世界。アンジェリークの歌声から、世界が広がってゆく。白い翼が、広がってゆく ように。 「完敗、だね……」 正直、ここまでとは思っていなかった。そして、レヴィアスの目の高さに素直に感嘆するしかなかった。 |
ジョヴァンニを出したのはただの趣味です。