エレベーターを降りると、そこは一面の薔薇園だった。真紅、純白、薄桃色、黄色、紫のもの、さまざまな色、種類の薔薇が咲き
乱れている。
「すごい……」
 思わず簡単のアンジェリークはため息を漏らす。
「こちらです」
「うわ……」
 薔薇園を抜けると、大きな屋敷。この巨大ビルの屋上がこんなふうになっているとは想像もつかなかった。
「お金持ちってわからない……」
 素直な感想にカインは苦笑しながら、アンジェリークを屋敷に招きいれた。IDカードを示し、中に案内される。屋敷の中は一世紀
前のクラシカルな雰囲気を保っていた。家具も何もかもがアンティークのもの。アンジェリークはあまり詳しくはないが、その手の
鑑定家が見れば、髄円のものばかりであろうということはわかる。だが、屋敷の雰囲気は古めかしくはなく、むしろ品格すら感じさせる。
(どんな爺さんなのかしら……)
 一台で財を成した人物…と言われても、ピンと来ない。成金趣味かと思えば、屋敷の雰囲気からはそんなことを感じさせはしない。
むしろ、好ましいとも思える。
(ま、本人を見ないとなんともいえないわね……)
 アンジェリークを呼び出したのは何の意図があってのことなのか。それもわからないのだし。
「お帰りなさいませ、カイン様」
 メイドたちもやはりクラシカルなメイド服に身を包んでいるが、それはこの屋敷にあわせてなのか、趣味なのか。後者であれば、
引いてしまうしかないな…とアンジェリークは苦笑した。
「レヴィアス様へのお客人だ。失礼の内容に」
「かしこまりました。ようこそ、いらっしゃいませ」
 恭しく礼をするメイドの態度はすがすがしくすら感じさせる。こんな風に扱われるのは面映く感じるのだ。
「お茶の用意は私が追って告げるので」
「わかりました」
 メイドへの指示を終えると、カインはアンジェリークに向き直る。
「すみません、お待たせしました」
「う、うん」
 どこまでも丁寧なカインの態度。身構えている自分がなんとなく後ろめたい。
「こちらです」
 再び案内されたのは、屋敷の奥にある部屋だった。
「こちらがレヴィアス様の部屋です。少し、お待ちください」
 そう告げると、カインはドアをノックする。
「レヴィアス様、カインです。アンジェリーク・コレット嬢に来ていただきました」
「……入れ」
「かしこまりました。では、アンジェリーク様、どうぞ」
 アンジェリークに微笑を向けると、カインは扉を開け、アンジェリークを部屋の中に導いた。
「お前が、アンジェリーク・コレットか……」
 その声と共に金と緑の金銀妖瞳がアンジェリークを見つめた。その瞳には自分がどう映っているのだろう、それがアンジェリークが
まず考えたことだった。


最後で、ようやくご主人様が登場。ふふふ……。


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