ダグベースで三人は顔を見合わせる。
「炎、思ったより元気そうですね」
「あいつは順応性が高いからな。あれが海なら、ノイローゼになりかねん」
「ハハ…言えてますね」
 楽しそうに話す二人を見て、海先輩って一体…と思ってしまう雷。
「それより、炎の位置は固定できたし。後は竜ですね」
「まずは校長先生からですね。森先輩、よろしくお願いしますね」
 にっこりと笑顔で言ってくる雷。だが、竜と同じく朝日山校長は癖がある人物なのである。何故か、彼らの行動を熟知していたり、
おいしいところを持っていったり。

「……まぁ、頑張るさ」
 森の胸に複雑なものが去来していたのは言うまでもない。

 翌日。朝練を早く切り上げた森は、朝日山校長がいるであろう畑に向かった。
「おう。沢邑。精が出るのう」
「大会も近いっすからね」
 普段はナンパで有名な森ではあるが、高1にて柔道三段をとった経歴の持ち主である。毎回、大会では良い成績を収めてくるのだ。
「ちょっと先生に聞きたいんですが……」
「何だね?」
「竜って、昔っからここに出入りしてました?」
「刃柴のことか? そうじゃの。昔から山海高校は来るものを拒まないのでのう……」
 どっちなんだよ…思わず、心の中で毒突いてしまう森である。
「何か確かめたいことがあるのなら、わしでなく、直接刃柴に聞くといい。裏山の大樹にたいていいる。昔っから、気に入っているよう
だからな」

「……! ありがとうございます」
 一礼して去ってゆく森を微笑ましく見送る朝日山校長。
「大会も友情も大切にするんじゃぞ……」
と、にこやかに呟きながら。どこまでも見通すかのような暖かい眼差しであった。

「……ってなわけだ。あの口振りなら、間違いないな」
「そうですね」
 教室では海に聞かれる可能性があるので、生物室で会話をする二人である。ちょうど移動教室が隣なのである。
「じゃあ、竜の方、お願いしますね」
「はいはい」
 軽く方を竦める森。やっかいな相手だな…と内心思いながら……。

 そして、昼休み。
「珍しいな。今日は食堂ではないのか?」
 珍しくコンビニの袋を持って教室を出てゆく森に海は声をかける。
「ああ、野暮用でな」
「時期が時期だ。あまり変な方向に動くなよ」
「はいはい」
 軽く肩を竦めて、森は竜がいるであろう裏山に向かった。

 チュチュ……。小鳥たちが竜の回りで楽しそうにはしゃいでいる。だが、どこか気遣わしげな様子。いつも彼をかわいがってくれる
はずの竜が浮かない表情なのだ。だが、不意に知らない人間の気配を感じて、飛び立ってゆく。

「森……」
「よう、ここだって聞いたんでな……。飯、一緒にいいか?」
「断る…と言っても、聞かないんだろう?」
「まぁな♪」
 正直言うと、森は竜には理解できない存在である。ナンパでいいかげん、それでいて、結構深いところまで見透かしてしまう。
「食えよ。甘いもん好きだよ」
「……」
 ぽんと差し出されたあんパンを受け取る。森は竜の隣に座りこんだ。
「いやぁ、良い天気だねぇ……。おまえさんがここを気に入ってるのなんとなくわかるな」
 そう言いながら、おにぎりを食べ始める森。調子が狂う。いつもなら、傍に居るのは炎。違う人物がいるだけ、それだけなのに。
「何の用だ?」
「用がなきゃ、来ちゃいけないか?」
「違うな。こんなところで俺と昼飯を食う奴じゃないだろう?」 
「まぁな。何かあると思わないほうがおかしいか」
 基本的に自分と波長があわない人間と分かり切っている。学年が違うこともあって、ダグオンという特別な存在でなければ、きっと
話すこともなかっただろう。

「おまえさんが大事なことを忘れてないか、俺はそれを確かめるように言われた」
「大事なこと……?」
「ああ…今の俺たちにも…そして、炎にも。そして…おまえさん自身のな……」
「俺自身の……?」
 戸惑う竜を見ながら、森は二つ目のお握りの封を開け始めた。



《 BACK 》 《 NEXT 》 《 勇者の部屋へ