ダグコマンダーの着信音で炎は目を覚ました。裏山にこっそりと止めたファイヤーストラトスで一夜を過ごしたので、少しばかり身体が痛い。
「炎先輩?」
「雷?」
ダグコマンダーに映る雷に思わず安堵のため息をつく。
「よかった、ご無事でしたか」
「おう、なんとかな」
「良かったです〜。ですが、炎先輩、今の状況は……」
雷の言葉の意味するところ、それは今、炎が過去の世界にいること。
「ああ、俺は今、過去にいるってことだろ?」
「状況はわかっていらっしゃるようですね。どのくらい前の過去かわかりますか?」
「8、9年前くらいだな。まだ、小学校低学年の頃の俺にあったから。飼っていた犬も生きてたしな。」
「――」
画面上で雷が戸惑ったような顔をする。歴史が狂う…とか、そういう心配をしているのだろうか。
「何か、会話などはされましたか?」
「いや、たいしたことはしてない。向こうも通りすがりにしか思ってないだろうな」
「…そうですか」
画面の向こう側で、何やら芯や良くと話している雷。その間に、炎の脳裏にふとした疑問がよぎる。
「なぁ、雷。俺のダグコマンダーって、壊れてるのか? そっちからは連絡が取れるみたいだけど」
「ああ、言い忘れていました。ダグコマンダー自体では時空を超える通信は難しいんですけど。ダグベースのメインを使ってなら、こちら
からの通信はできるんですよ」
「ふぅん……」
理論はよくわからないが、雷が言うなら、そのとおりなのだと思う。
「あ、本題に入ります。炎先輩、昔のご自分にはお会いになったんですよね。じゃあ、竜先輩には?」
「竜? 俺、ガキの頃のあいつを知らないぜ」
「……すみません。そうですよね。出も、竜先輩が鍵を握ってると思うんです」
「竜が?」
戸惑う炎に雷は手短に必要なことを説明をはじめた。
「竜が俺に……?」
「ええ、思い当たることはありませんか?」
雷に促され、思考を巡らせる。相手はただでさえ、謎だらけの相手。そう簡単に捕まるのなら、苦労はしない。
「……待てよ」
「炎先輩?」
いつも、竜がいる場所にいたことものことを思い出す。似ている…確かにそう思った。無愛想な態度。小鳥が懐く様子。それはどこかで
見た光景。もし、あれが本人なら……。
「おっちゃんに探ってくれ。竜が小学生の頃から出入りしてなかったか」
「じゃあ、先輩……」
「裏山で会ったあのガキ。もしかしたら、あれが竜かもしれない……」
「わかりました。それは森先輩にお願いします」
「ああ」
とりあえず、状況を確認する。
「あ、炎先輩。そっちで使ったお金、レシートでもいいですから、領収証はちゃんと取っておいてくださいね」
「はぁ?」
「経費で落ちないか、聞いてみますから」
「……サンキュー」
流石は見習といえど、社会人である。妙なところで感心してしまう炎であった。
「じゃあ、僕たちは僕たちで動きます。炎先輩の方も、頑張ってくださいね」
「ああ」
「じゃあ、また、連絡します。もし何かあれば、ダグベースにつながるように、ダグコマンダーの設定を変えておきますから」
「わかった。頼んだぜ」
「はい。それじゃ、失礼します」
雷の敬礼のあとに、ピッと電子音がなり、ダグコマンダーが切れる。
「しかし、あのガキが竜かよ……。『三つ子の魂、百までも』って、よく言った言葉だよなぁ……」
などと呟く炎は、自分の事をすっかり棚にあげていたのは言うまでもない。
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