柔らかな日差しが注ぐ部屋。あまりの暖かさについアンジェリークはうとうととしてしまいそうになる。
「眠いですか? でも、もう少し待っていてくださいね」
 その言葉と共に優美で長い指先がフワフワの金の髪を丁寧に編み込んでゆく。
「リボンはこの色がいいですね」
 身にまとっているのはピンクのケープ。同色のリボンで最後の仕上げ。
「はい、できあがりましたよ」
「……」
 鏡の中の自分をジッと見つめるアンジェリーク。鏡に映った自分の姿とリュミエールを何度も見比べる。
「とても、愛らしいですよ」
「♪」
 その言葉に嬉しそうににっこりと笑う。そして、パタパタと飛んで行ってしまう。
「クラヴィス様もきっと誉めてくれますよ」
 その言葉にアンジェリークは振り向いて、嬉しそうに笑顔を見せるのであった。

 カーテンを閉めきった静かな部屋でランプの明かりを光源にクラヴィスは水晶球を見つめている。神秘のこの水晶球は時折、神秘な光を放ち、彼に道を示す。
「……まだ、見つからぬか」
 それは彼が意識して、見えるものではなく、不意に水晶球が映し、指し示すもの。だが、水晶球は彼の求める答えを映し出さない。
「♪」
 バタン…と、扉が開くと同時に小さな天使が入ってくる。パタパタと小さな翼を必死に羽ばたかせて。
「どうした?」
 執務室の机に腰掛けて、自分を見上げる小さな天使にクラヴィスは水晶球を片付ける。万が一、落としたりして、この天使が怪我でもしたり、気に止んだりしてはいけないから。つくづく、この天使には甘いと自分でも思う。まぁ、リュミエールほどではないが。
 今も水晶球を見ていたのはこの小さな天使の帰るべき場所を探してのこと。そうすぐに見つかるとか思えないが。
「♪」
 にっこりと笑顔で自分の頭を指さすアンジェリークに視線を向けると、丁寧に編み込まれた髪が見える。
「……」
 期待に満ちた瞳で見上げてくる。
「ああ…よく似合っている」
 大きな手で頭を撫でてやると、うれしそうにアンジェリークは頷く。それはさながら、小猫が懐く様によく似ている。暫くそうしていると、不意にアンジェリークがクラヴィスの髪に目を向ける。
「……どうした?」
「……」
 じぃっと見ていたかと思うと、突然掴んでしまう。その行動の意味するところを察して、クラヴィスは苦笑する。
「私の髪より、リュミエールの髪のほうが向いていると思うが……」
 リュミエールにしてもらって、嬉しかったことをクラヴィスにもしたいのだろう…と思うのだが、アンジェリークの二倍近くはある髪の長さである。リュミエールも髪は長いが、クラヴィスに比べればましである。だが、クラヴィスの提言にアンジェリークは首を振る。クラヴィスがいいのだ…と。
「好きにするがいい……」
 結局折れるのはクラヴィスである。この天使に悲しい顔はさせたくない。甘い…とは思いつつも、フワフワの笑顔のほうがこの
天使にはよく似合うのだから。

「♪」
 嬉しそうにアンジェリークは小さな手でクラヴィスの髪を結い始めた。

 そして、半刻が過ぎた頃……。
「……どうかされたのですか?」
 部屋で水彩画を書いていたリュミエールは突然、アンジェリークを抱きかかえて部屋に入ってきたクラヴィスに戸惑っていた。
「絡まったのでな、解いてやってほしい」
「は……?」
 思わず、間抜けな対応になってしまったが、よく見るとクラヴィスの長い髪の一房にアンジェリークが絡まってしまっている。
「……」
 今にも泣きそうな顔。だが、どこか愛らしくもあって。笑うのを必死に抑える。
「暫く待っていてくださいね……」
 賢明にもリュミエールも状況を察してしまった。一生懸命、編み込んでいこうとしたのだろうが、如何せん、髪が長すぎる。アン
ジェリークの小さな手には無理な量だっただろう。リュミエールの繊細な指が丁寧に解いてゆく。

「はい、できましたよ」
 ようやく解放されたものの、アンジェリークははシュンとした顔。リュミエールはそんなアンジェリークにブラシを差し出す。
「?」
「これで、クラヴィス様の髪を梳いてくれますか?」
「……♪」
 ブラシを手に、にっこりと頷く。パタパタとはばたきながら、クラヴィスの髪をゆっくりとすいてゆく。全部好き終えると、さすがに
疲れたのはフゥッと大きなため息。

「お疲れ様でした。お茶にしましょうね」
「♪」
 クラヴィスの膝に上にくつろいで、静かなお茶の時間。ご褒美にイチゴのタルト。至福の時間の訪れ。

 そして、小さな天使にお仕事はブラシとともに与えられた。 

これも、書きたくて仕方なかったシーンの一つです。クラヴィスの髪に絡みついちゃうリモ〜。可愛いよなァ……

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