小鳥の声と、暖かな日の光に誘われ、小さな天使のアンジェリークは目覚めた。
「……?」
寝ぼけ眼で、首を傾げながら、周りを見る。藤の籠にいくつもの柔らかなクッションが敷き詰められたところで眠っていたようだ。
かけられているのはブランケット。
「目が覚めたようだな……」
「――!」
振りかかってきた静かな声に、アンジェリークはぼんやりと顔を上げる。声の主を確認した途端、パタパタと飛んで行く。声の主
クラヴィスはまだ目覚めきっていない様子の天使に微かに表情を緩ませる。
「よく眠れたようだな……」
「♪」
ひょいと天使を腕の中に迎え入れると、クラヴィスは部屋を後にした。
「おはようございます。クラヴィス様」
リビングにはすでにリュミエールの姿があった。クラヴィスの腕の中のアンジェリークに気づくと、にこやかに微笑みかける。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
にっこりと笑みを返す事で答える。
「リュミエール、朝の支度をしてやれ……」
「あの…クラヴィス様は……?」
「自分のことは自分で出来る……」
すたすたと去ってゆくその後ろ姿に多少の戸惑いを覚えるリュミエール。彼の人は生活するところにおいては、無頓着なところが
あるからだ。だからこそ、リュミエールの世話好きの血が騒ぐのだが、自分以上にこの天使が生活能力がない…と思っているから
だろうか。自主的に動いている。
(いい傾向なのでしょうね……)
思わず笑みを零すリュミエールにアンジェリークは不思議そうに首を傾げている。
「ああ、すみません。まずは顔を洗いましょうね」 腕の中の小さな天使に、リュミエールは穏やかに声をかけた。
洗面所でまず学ぶ事は水道の使いかた。
「これを押すと、水が出てきますよ」
リュミエールに言われる通りに何度か水を出しては、止める。やがて楽しくなってきたのか、何度も何度も繰り返して。
「水は大事にしなくては行けませんよ」
「……」
困ったような笑顔で窘めるリュミエールに、小さな天使は神妙に頷いた。その様子もまた、可愛らしい。すっかり、保護者の心境に
なってしまっているリュミエールであった。
洗顔を終えると、いったんリビングに戻る。クラヴィスはすっかり、支度が出来て、ソファに座っている。
「〜♪」
パタパタと嬉しそうに飛んで行って、ちょこんとアンジェリークはクラヴィスの膝の上に座る
「すっかりその場所がお気に入りのようですね……」
クラヴィスは無表情で無言だが、フワフワの金の髪を撫でている。その仕種はとても優しい。
「そこでしばらく待っていてくださいね」
パタン…と扉を閉めて出てゆく。心地よい沈黙が流れる。必要以上は話さない青年と言葉を話せない小さな天使でも、取ろうと
思えば、コミュニケーションは取れてしまうものらしい。
しばらくすると、紙袋を持ったリュミエールが戻ってくる。
「似合うとは思いますが……」
袋から出されたのは鮮やかな真紅の色と、柔らかなピンクのケープ。シルクで作られた上等のもの。
「どちらがお好きな色ですか?」
二つを出され、困ったようにアンジェリークは首を傾げる。どちらも可愛いと思っての子とらしい。
「……」
「迷いますか?」
その言葉にコクコクと頷く。すると、不意にピンクのケープに手が伸ばされる。
「おまえにはこの色のほうが良かろう……」
「クラヴィス様……」
キョトンとしているリュミエールを横目にクラヴィスはピンクのケープをアンジェリークに着せてやる。すっぽりと羽を隠してしまう。飛んでいるところを見られなければ、サイズ的に普通の赤ん坊と何ら終わらない。
「♪」
嬉しそうに二人の周りを飛び回る。飛ぶのには支障はないらしい。
「……」
意外にもこの人は世話好きなのかもしれない…クラヴィスに対する認識を改めざるをえない、リュミエールであった。
ゴメン…あたし、この話すごく楽しんでる……。天使リモはイメージ的にはコレットよりもちびちゃん。
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