| 「そういうわけで、あたし今度の23日は連絡つかないから」 お昼休みの芝生広場。むぎ特製のお弁当を広げて、楽しいランチタイムの最中にこんな報告をしてくる親友を夏実は微笑ましく見つめる。恋愛に疎かったむぎがこうして、大好きな恋人と過ごすという報告をしてくる日が来たのだ。その相手がかつて片思いしていた人物けれども、今はもう胸は痛まない。辛い思いをし、多くの困難を乗り越えた目の前の親友を幸せにして欲しいと願うだけである。 「わかった。楽しんでおいでよ」 「うん。ありがとう」 「松川さんにご馳走作ってあげるんでしょ?」 「もちろん」 むぎの料理の腕は夏実は知っているし、同居人であった依織ももちろんだ。どんなレストランで食べる料理よりも、むぎの手作りの料理を喜ぶだろう。 「依織くんの好きな和食を極めるために頑張ってるよ。だから、今日も和風のお弁当でしょう? 夏実にもつき合わせて悪いんだけど」 「そんなことないよ。あんたのご飯、美味しいもん。つーか、松川さんがいなきゃ、あたしが嫁にするよ……」 「夏見、甲斐性あるしねぇ」 「あんたほどじゃないよ」 自覚はないが、二人とも下手な男子生徒よりも頼りがいがあると祥慶学園ではもっぱら言われている。ラ・プリンスに女性を選ぶことができるなら、この二人と遊楽院十和子が入るだろうというのが、祥慶学園の生徒たちの認識である。 「じゃあ、その甲斐性で僕を養って♪」 「ぎゃっ!」 そんな言葉と共に背後から抱き疲れたむぎは思わず悲鳴を上げた。 「うーん、色気のない声……」 「ちょっと、瀬伊くん!」 こんな風に抱きついてくる人物に思い当たるのはやはり一人しかいない。 「おい、一宮。鈴原が困ってんだろう?」 引き剥がしてくれるのは、麻生である。 「ありがとう、麻生くん」 「い、いや……」 にっこり笑ってむぎが礼を述べると、心なしか麻生は顔を赤らめる。 「どうして、一宮さんと羽倉さんがここに?」 夏実が疑問を口にすると、麻生が何ともいえない顔をした。 「松川さんから、物騒な電話がかかってきてよ……。こいつもそうだったらしくてな、じゃあ、誕生日じゃない今は鈴原にかまってもらおうって言い出して聞かなくなって。俺がストッパーになりに来た」 「物騒な電話?」 思わず声を合わせるむぎと夏実。今度は不満そうな顔をして、瀬伊が答える。 「そうだよ? 松川さんから、23日はむぎちゃんが松川さんのお嫁さんになりに行くから、間違ってもむぎちゃんの手を煩わせるようなまねをしたり、邪魔をしに繰るっことがないようにって電話。ものすごい怖い声だったんだから」 「ドス効きまくってた……」 思い出したくもないのか、遠い瞳になる麻生。 「一哉にもかけてるみたい。だから、一哉からは『間違っても、松川さんの邪魔はするな』って電話がかかってきたし。一哉に何を言ったのかも気になるんだよねぇ……」 「って言うか、依織くん……」 誕生日のことを何故彼らに話しているのかがまず理解できない。内緒にしようと入っていないが、彼らに話すとは思っていなかった。 「松川さん、邪魔されたくないから、先手を打ってきたんだよ。せこいなぁ……」 「……そういう問題かよ。あ~。何か、飯食ってるときに邪魔して悪かったな」 そう言って、麻生は瀬伊を連れて行こうとするが、ただで動く彼ではなく。 「むぎちゃん、このおにぎり欲しいなぁ♪」 「いいよ。あ、麻生くんも食べてく? カフェテラスまだ混んでるんでしょう? 軽く食べて言ったら?」 少し多めに作ったから…と、笑うむぎに麻生もご相伴に預かることになる。そして、四人でのランチタイムとなる。 「まぁ、むぎちゃん、松川さんに愛されてて良かったね♪」 「……」 何とも返事ができない。そんなむぎに瀬伊は更に追い討ちをかけてくる。 「勝負下着は買った? やっぱり、松川さんも男だから、お嫁さんなむぎちゃんがそういうのをつけていると嬉しいと思うよ♪」 「一宮、お前な〜」 思わず、食べていた八幡まきを気管に入れそうになってしまった麻生がむせながら、瀬伊をたしなめる。そんな光景に何となく23日が不安になってくるむぎであった。 そして、迎えた22日の朝。学校帰りに依織と待ち合わせているため、駅のコインロッカーにつめるべく荷物をつめ始める。…とはいえ、洗面道具やパジャマなどはすでに置いてきてあるので、一日分の着替えと化粧ポーチなどである。 (結局、買っちゃったけど……。普通のも持って行こう……) 色々と悩んだ末、一人で出した決断。勝負下着を買うか、買うまいか。流石に夏実には相談できず、昨日まで悩んだ結果、購入を決めた。…とはいえ、この手に下着をつけるのも恥ずかしいので、普通のも一そろい買うには買った。そういうわけで、下着だけは二日分だったりする。そして、もう一つ。ベルベットの箱の中の小さな指をあを取り出して。鎖に通して、ペンダントトップにして、身につける。今日は体育もないので、そうしたかった。 「依織くんの一日お嫁さんかぁ……」 面映い気分になりながらも、むぎは忘れ物がないかをしっかりと確認して、荷物を持って家を出るのであった。 |
か、閑話休題…ということでw 絶対、いおりん根回しすると思うんですよ……。邪魔されたくないから(爆) 次から、新婚生活に入ります。
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