| 食堂には既に用意されていた朝食がおいしそうに湯気をたてていた。 カリカリに焼かれたベーコン、ふわふわのプレーンオムレツ、とれたての野菜を使ったサラダ、コンソメスープに焼きたてのパンに 絞りたてのオレンジジュース。 「アンジェリークの分は?」 「あ、こちらです」 マカロニの入った野菜スープにサラダとフルーツ。フルーツはどれも食べやすいように、と一口サイズ。 「食べるがいい」 「♪」 赤ん坊用の椅子に座らせると、アンジェリークはおいしそうに食べ始める。 「うまいか?」 「〜」 「それなら良い……」 素直に頷くアンジェリークに安堵の溜息をつくカイン。まずいと言われたら、確実に矛先は彼等に来るのだから。だが、かと言って、 彼等の苦労がなくなる筈もない。 「ユージィン。我の皿は下げろ。コーヒーだけでいい」 と、理不尽な命令が下るのもしばしばのこと。どうやら、今朝はアンジェリークが食べている所を見たかっただけらしい。 「召し上がらなくて、宜しいのですか?」 念の為の再確認。朝食を取らないのなら、栄養剤の準備と昼と夜の食事のメニューを練り直さなければならないのだ。 「我はいい」 「……わかりました」 朝食は午前中の大切なエネルギー源。できたら、食べてもらいたいのだが、言って聞くような人なら苦労はしない。 レヴィアスに気づかれぬように溜息をついて、片付けようとすると、不意に小さな力で引っ張られてしまう。 「アンジェリーク?」 「……」 ユージィンの服の裾を掴んでアンジェリークは首を振る。 「〜」 皿とレヴィアスを交互に指差し、それはレヴィアスのものだと訴えているらしい。 「あ、あの。誤解しないでくださいよ。レヴィアスがいいとおっしゃったんですよ」 ユージィンがレヴィアスの食事を取り上げようとしていると思っているらしい。あらぬ疑いを向けられるのは迷惑以外の何物でも ない。 「……」 そうなの? とレヴィアスに視線で問いかける。 「アンジェリーク、我のことは気にせずに食べればいい」 「……」 納得できないと言う顔をするアンジェリークをレヴィアス以外の誰もが興味深そうな目で見ている。彼等が言って聞くようなレヴィ アスではないが、アンジェリークなら違ってくるのかどうか、気になるのだ。 「〜」 「?」 いきなり、フォークを掴んだかと思うと、アンジェリークはサラダのトマトを刺して、レヴィアスの口元に持って来た。そして、何度も 口をあーんと開けてみせる。 「我に食べろ、と……?」 「♪」 コクコクと頷くアンジェリークに戸惑いは隠せないが、じっと大きな瞳でレヴィアスを見上げるその瞳を曇らせたくもなく、トマトを 口にすると、嬉しそうに笑い、次にはパンを掴んで、一生懸命にちぎって、レヴィアスの口元に持ってくると、それも口にし、それが 何度も繰り返される。 「うわぁ、ラブラブな光景。これ、出版社に売れそうだよね〜」 「しゃれにならんぞ……」 ジョヴァンニに突っ込みを入れはするものの、何とも言えない複雑な思いが去来する。 「下げなくてもよろしいのですか?」 念の為にユージィンが再確認をする。 「アンジェリークの邪魔をする気か?」 「……いえ」 食べないよりも、食べる方が健康にはいい。口出しをする気にもなれなくなりつつある。 「それより、アンジェリークの皿をこちらに。我に食べさせてばかりで、食事が進まないのは気がひける」 ならば、アンジェリークを自分の場所に戻せばいい、そう思いつつも誰も口には出さない。 「アンジェリーク、食べるがいい」 今度はアンジェリークにレヴィアスが食べさせ始める。あーんと口を開けて、食べさせてもらうアンジェリークはとても可愛い。だが、 素直にほほえましくは見つめられず。複雑な想いが流れる中、レヴィアスとアンジェリークは美味しく朝食を取るのであった。 |
らぶらぶな二人……
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