贅を尽くした広さの浴室をアンジェリークは不思議そうに見つめる。また知らない部屋に来たことからの好奇心が働いて、キョロ
キョロと首を動かしたりも。レヴィアスはアンジェリークを抱えたまま、シャワーのコックを捻る。

「!?」
 途端に出たお湯にアンジェリークは思わず身を竦ませた。
「〜」
 ビックリして、アンジェリークはレヴィアスにしがみついてしまうと、レヴィアスは慌てて、シャワーを止めた。
「すまない。恐かったか?」
 しがみついたアンジェリークの髪を優しく宥めるように何度も撫でてやると、ホッと息をつく。いきなり、熱いお湯が飛び出したことは
かなりの驚きだったらしい。
「これはシャワーだ。ここをこうすると湯や水が雨のように出て来る」
 説明しながら実践してみる。最初は怯えていたが、慣れてくると、小さな手をシャワーから出るお湯に伸ばし、その温度を確かめる
ようになる。
「もう怖くないか?」
 レヴィアスの問いにコクリ、と頷く。
「なら、大丈夫だな」
 暖かなシャワーの雨に二人して打たれる。程よい熱さのためか、気持ち良さそうだ。
 それから、レヴィアスはレヴィアスはアンジェリークの髪を洗いはじめる。癖のない栗色の髪は瞬く間に泡に包まれてしまう。
「痛くはないか?」
 レヴィアスの問い掛けに頷くのが首の動きで伝わる。力加減は弱めにしていたが、これで一安心。再び丁寧に洗いはじめる。
(アンジェリークに似合う香りのものを探してやらねばな……)
 ふと思い付くのはそんなこと。正確に言えば、部下たちに探させるの方が正しいのだが。この際、それはどうでもいい。レヴィアスが
使う男性用のシャンプーやボディシャンプーはこの天使に合わない気がする。この小さな天使には甘い花の香りが一番似合うだろう。
「洗い流すから目を閉じるのだぞ」
 そう声を掛けてから、洗い流してやる。泡が全部流れ落ちると、アンジェリークは首をブルブルと振って、お湯を払い始めた。
「こら、まだだ」
 そう言いながら、泡立てたスポンジでアンジェリークの身体を洗う。教えられたわけではないのに、レヴィアスは絶妙な加減で
洗っている。
「流すぞ」
 再び、暖かいシャワーに包まれる。綺麗に泡を洗い流さすと、レヴィアスはアンジェリークを抱き上げて浴槽の方へ。
 浴槽もまた広く作られており、小さなアンジェリークから見たらプール並かもしれない。
「一人で入れるか?」
 念のために風呂の中に立たせてみる。何とか足がつくくらいの湯の量だ。
「これにつかまってみるか?」
 手にしたものは洗面器。ぷかぷかとお湯に浮かばせたものにつかまらせて見る。
「〜」
 すると、楽しそうにお湯に浮かび始める。パシャパシャと泳ぎ始めてしまった。
「……」
 取りあえずは構わないだろう。そう判断して、レヴィアスはシャワーを再び浴びようとした。だが……。
 バシャン!! バスルーム中に響く音。
「アンジェリーク?!」
「〜」
 浮かせていたはずの洗面器がバランスを崩したのか、転覆してしまい、それにつかまっていたアンジェリークもお湯に沈みかけた
らしい。すばやくレヴィアスが掬い上げたが、当のアンジェリークは何が起こったのか、把握しておらず、呆然としている。
「怖かったか?」
「……」
 ブルブルと首を振る。水を切るついでなのか、オーバーアクション気味に。ほっと息をついて、レヴィアスはアンジェリークを抱き
上げる。
「最初から、こうすれば良かったな……」
 アンジェリークを抱いたまま、レヴィアスはバスタブにつかる。だが、アンジェリークはまだ泳ぎ足りないのか、じたばたとレヴィアスの
腕の中でもがいている。
「こらこら、暴れるな」
「〜」
 泳いでいるのが楽しかったのだろう。つまらなさそうにレヴィアスを見上げて来る。
(浮輪を買ってやるか……)
 この先もすっかり風呂に入れるつもりなのか、アンジェリークが何を喜ぶのか思案するレヴィアスだった。

この人、子供をお風呂に入れるの向いてない……。ええ、絶対に。。


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