チュンチュン……。朝の小鳥たちの鳴き声に誘われたのか、クッションが敷き詰められた籠の中の物体がもぞもぞと動きだす。
「〜」
 しばらくすると、その物体、アンジェリークはムクリと起き上がる。
「……?」
 寝ぼけ眼を擦りながら、アンジェリークはぼんやりと周囲を見回す。ここは見知らぬ場所。眠る前まではレヴィアスの膝の上にいた
はずなのに。
「目が覚めたのか?」
 すっかり耳に馴染んだテノールに顔を上げると、レヴィアスの姿が見える。それが嬉しくて、アンジェリークはレヴィアスの腕の中
まで飛んでくる。
“レヴィアス!”
 すっかり覚えたレヴィアスの名を呼ぶこと。こんなことがとても嬉しく思う。他の誰でもなく、アンジェリークだから、嬉しいのだ。
「おはよう、アンジェリーク……」
 優しく頭を撫でられると、アンジェリークはされるがままになる。レヴィアスの手は大きくて、触れた処から彼の温かさが伝わって
来るようで。だから、アンジェリークはレヴィアスに頭を撫でられるのが好きだった。
「〜♪」
 すりすりとレヴィアスに甘えてくる。これが他の人間であるなら振り払うところだが、この小さな天使は別。可愛さや美しさで媚る
ものほど醜いものはない。だが、この小さな天使はその存在全てが愛らしく、身体一杯でレヴィアスに様々な温かさをもたらせて
くれるのだから。
「アンジェリーク……」
「?」
 不意にレヴィアスがアンジェリークを抱き上げ、同じ視線の位置に持ち上げる。アンジェリークは何が起こるのかと首を傾げる。
「朝の挨拶だ……」
「……?」
 その言葉ともに柔らかな頬に柔らかな何かが触れる。
「おはようのキスだ。判るか?」
 ぼんやりした顔で自分の頬に触れるアンジェリーク。
「嫌だったか?」
「〜」
 ぶんぶんと首を振る。頭を撫でられた時のように暖かくて、優しい気持ちが流れ込んできたのだ。嫌であるはずがない。
「我にも同じようにしてくれるか?」
 こくん、と頷くとアンジェリークはレヴィアスの頬に顔を寄せる。まずは頬に。優しい温もりが降りると、それだけで満たされた
気持ちになる。
 そして、教えられてもいないのに、昨日の中庭の時と同じように、異彩を放つ金と緑の瞳に。まるで、慈しむかのように。
「……」
 唇が離れると、ジッとレヴィアスの顔を見上げてくる。これでいいの?と確認するかのように。
「ああ、充分だ」
 ご褒美に、今度は額にキス。
「♪」
 お返しにアンジェリークもキスを返して。その度に暖かな時間が満たされる。
「これからもこうして挨拶をするからな」
 レヴィアスの言葉にアンジェリークは笑顔で頷いた。

おはようのちゅう……。まぁ、いいけどね。


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