和気あいあいとはいいがたいが、子供達は食後の時間をこんな風に過ごすのは初めてだ。ショナは食事が終われば、すぐに部屋に
引っ込むし、ルノーも大人達ばかりの中では辛いのか、おどおどとユージィンの影に隠れているからだ。自分より遥かに小さい子供、
しかも天使という特別な存在の面倒を見ることで、二人の精神的な成長をはかれる。
「坊主どもには良い経験だな〜」
 自分にも妹がいるゲルハルトはうんうんと頷く。親分肌の彼は妹だけではなく、近所の子供の面倒を見てきたから、その辺りはよく
理解できるらしい。
「頭がいいだけじゃだめなこともあるからな〜」
「あなたの場合はルノーの半分でも頭のよさが必要でしょう?」
 しみじみと呟くウォルターに対し、容赦ないユージィンの言葉。キジも鳴かずは何とやら…の良い例かもしれない。
「ま、子供はあれでいいかもしれないがな……」
 そう呟いて、カーフェイは大きく溜息をついた。 。だが、それだけの諦めの境地に全員が達せられるというわけではなく。
「ルノー、あまりはしゃいでくれるな。今、大事な話をしていることは承知だろう?」
「ご、ごめんなさい……」
 キーファーの鋭い口調にビクンとルノーが身をすくめて謝る。思わず、ユージィンが何かを言おうとする前に、小さな天使は行動を
起こした。
「え……?」
 何度もルノーの頭をなでている。何かにおびえたような(--;)をするのが気になったのだろう。
「あ、ありがとう……」
 素直にそれを受けるルノー。とても、ほのぼのとした風景。だが、ぴきっと空気が凍りつく。
「れ、レヴィアス様?」
 この場合、ルノーが悪くないのはわかっているらしい。
当然、その空気が向けられるべき相手は決まっている。

「キーファー」
 凍りつくような声にキーファーは身を竦める。地雷を踏む方が遥かにましな気がした。
「何でしょうか、レヴィアス様?」
 声に動揺の色を出さなかったのは流石、と言ったところであろう。カインがレヴィアスの右手なら、自分は左手であると自負している
だけのことはある。
「ここはおまえたちがくつろぐ場所と、我は見なしているし、おまえたちもそう思っているはずだ」
「はい、レヴァアス様のお心遣いに感謝しています」
「その寛ぐべき空間に我は我が儘でここにいる。お前たちには息が詰まって仕方なかろうがな。おまえたちの寛ぐべき時間を邪魔する
我こそが責められるべき存在であろう? ルノーを叱るのは、筋違いだ」
 一刀両断に言い切るレヴィアス。誰が聞いても、かなりな三段論法である。
「かなり無茶苦茶言ってる……」
 誰とはなしに呟きの声が漏れる。勿論、レヴィアスには聞こえない程度の声で。
 つまりはこういうことだ。アンジェリークに慰められたルノーにムッとしたが、その原因は自分がここにいることで騒いでいたら、支障に
なると、キーファーがルノーを窘めたこと。それにより、ルノーは萎縮したのだから。キーファーが何も言わなければ、問題はなかった
のだ。かなりではなく、思い切り無茶苦茶である。
「で、ですが、レヴィアス様……」
「それに責められるべきは集中力に欠いた我にある。ルノーに何等瑕疵などあるはずもない。違うか?」
 確かに言っていることには間違いはないので、これ以上の反論などは出来ない。
「わかりました……」
 諦めたように肩を下ろし、溜息をつくキーファーをカインは気の毒そうに見つめる。右腕と左腕の違いはあろうと、レヴィアスに仕えて
きて長い。諦めがつくか、つかないかの差である。
 そして、諦めのつく参謀は今後の対応を否応無く求められる。損な性分だと思いつつ、それが出来るのが自分だけだという現実も受け
入れている。右腕と左腕の違いの大きさははここにある。

気の毒に……。


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