「明日からはレシピを色々手に入れますので……」
「それは、我にではなく、アンジェリークに言う言葉であろう?」
「はぁ……」
 レヴィアスの指摘にため息をつくしかない。レヴィアスにしてみれば、食べるのはアンジェリークなのだから、まずはアンジェリークに
聞くべき事なのだから。
「アンジェリーク。食事はこれでいいですか?」
 そうカインが尋ねると、アンジェリークはにっこりと頷く。それにホッとアンドのため息をつく。
「あ、あの。フォークはこう持つんだよ」
 実践して、フォークとスプーンの持ち方を教えてやるルノー。小さな子供用のものがないので、デザート用の小さいものを使用して
いる。アンジェリークに教えてやるその光景は子守りをしている兄の図にも見えてくる。
「あ、これを食べるんだよ」
 コクリと頷いて、フォークに刺したアンジェリークの口に合わせた一口サイズの人参を口に入れる。
「お、美味しい?」
「♪」
 美味しそうに食べるアンジェリークに誰もが胸をなでおろす。もしも、まずいなどと思われでもしたら…と、考えただけでも怖い。
「……」
 ふと、気づくとアンジェリークがじっとレヴィアスを見つめている。
「どうした?」
「……」
 レヴィアスと夕食の間にアンジェリークは視線をさまよわせる。アンジェリークはちゃんと食べているのに、レヴィアスがなにも手を
つけていないことが気になったらしい。
「我はちゃんと食べる。そんな顔をしなくてもいい……」
 そう言いながらも、あまり手をつけてはいない。元々色に関しては執着のないほうであるし、栄養剤でなんとでもなると考えている
性格でもある。
「……」
「そんな顔をするな、天使だというのに、案外疑い深い性格なのだな……」
 あまりにも真剣に見つめてくるものだから、せめて出された分は食べてみようとは考える。しぶしぶといった様子で食べ始める主人に
コック達は今宵は安堵のため息を漏らすことは必至であろう。真心と持てる技術の全てを持って作った料理は毎回ほとんど手がつか
ないまま。何の文句もないということで、クビになる事はないが、料理人としての自信をなくしてしまう。今まで、何人の一流シェフがここを
去った事か。
「あれのおかげで食べ始めたって言っても、ショックだろうね……」
「言うなよ、絶対」
 真実は知らせない方が時には親切。そういうものだ。複雑な食事時は静かに去っていった。


駄目人間だよネぇ、本当に……。


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