「ど、どうかな?」
 ドキドキといった顔でルノーがたずねてくる。アンジェリークが物言い田下にレヴィアスの服のすそを掴むと、その意図を察したレヴィ
アスは抱きかかえていたアンジェリークを話し、自由にさせてやると、アンジェリークはパタパタと部屋の中を飛び始める。
 白いレースのカーテンを使う窓は大きく、外の光をふんだんに取り入れることができる。光の中でふわふわ飛んでいる天使はとても
愛らしい。
「窓が広すぎぬか?」
「あの、この窓、外からはアンジェリークの姿が見えないように屈折率とか、変えてるから……」
 レヴィアスの指摘にルノーはびくびくしながらも、ちゃんと答えた。
 元々、この屋敷のセキュリティは高く、外からの侵入者は無事に外に出ることはほぼ不可能な状態にしている。アンジェリークの姿を
見ることは不可能に近いのだ。
「これは……?」
 大き目の籠の中にクッションが敷き詰められている。持ち運びがしやすいように、太い目のリボンが紐代わりになっている。
「あ、それはアンジェリークのベッドですよ」
「ベッド?」
 部屋の中にはちゃんと子供用のベッドもある。家具はどれもアンティーク調の可愛らしいものが取り揃えられているのだ。
「その、レヴィアス様の近くで眠った時に使えるかなっておもって……」
「ああ、そういうことか〜」
 用は携帯用のベッドらしい。籠は大きめのもので、アンジェリークが寝てもすっぽりと収まる。
「結構可愛いかもな……」
 その図を思わず想像してしまうゲルハルト。確かに可愛い事は可愛いだろう。
「ここはおまえの部屋だ。不満はあるか?」
 レヴィアスのその言葉にアンジェリークは首を振る。それどころか、どこか遠慮がちな顔までする。
「不満は内容だな。なら、それでいい」
 そう告げると、アンジェリークを手招きし、再び腕の中に。アンジェリークも迷いなくその腕の中におさまってしまう。そこがすっかり定
位置だと言うように。
「部屋の意味、ないかもね〜」
「どういうことだ?」
 ジョヴァンニのその言葉に嫌な予感を覚えつつ、聞いてしまうのはカインが生来の苦労性だからだろうか。とばっちりの処理は昔から、
彼が専門なのだから。それをわかっていて、ジョヴァンニやカーフェイが好き勝手に行動する事も多い。
「だって、あんなにラブラブだもん」
「……」
 そういう問題なのだろうかと思いつつも、あながち間違いでないのかもしれない。そう感じてしまいつつ、そうでないことを祈るしかなかった。
「全く、情けないと言うか……。これが世間に知れでもしたら……」
 とりあえず、部下たちとのご対面が済んでから、アンジェリークを抱いたまま、また庭に出てしまったレヴィアス。色とりどりの花の中で
戯れる天使を眺めている。それを窓から見て、嘆くキーファー。
「大丈夫だろう? ここは基本的に俺たちだけだし。使用人たちもテリトリー以外のところには入らないように言ってるし」
「だが、何処から情報が漏れるかわからぬのだぞ。だいたい、突然、空中に浮かんでいたというところからして、おかしいではないか」
 苛立った口調のキーファーにカーフェイはため息をつく。天使がいようといまいと、彼らの仕事が変わるわけではなし。あえて言うなら、
別にどうでもいいことなのだ。それでレヴィアスのカリスマ性が消えるわけではないのだし。
「でも、まぁ、男所帯にあれは…と言う気もしないでもないが……」
 アンジェリークに用意された部屋は可愛らしくかつシンプルにまとめられている。だが、どうも、男には気恥ずかしい感じの部屋だ。面倒を
見るのが自分でなくてよかったと、痛感するカーフェイであった。
「でも、あれが外にばれて困るとしたら、隠し子説だと思うけどな」
「そうだよな……」
 ゲルハルトの言葉にウォルターも頷く。ある意味、これが正しい危惧なのかもしれない。
「やだよね〜。身に覚えがないのに『私が母親です!』ってのが、何人も出てきたら〜」
「それ、ありえない話じゃないような気がする……」
 からから笑いながら、とんでもない事をいい出すジョヴァンニにショナが突っ込む。確かに洒落にはならない。レヴィアスの持つ権力と
資産を目当てに近づいてくる女性が後をたたないのも事実なのだから。
 レヴィアス自身はそのようなオンナに興味を示しもしない。享楽にふけっていた彼の母親のため、どこか女性不信のところもあるゆえに。
「幼女趣味扱いをされたら、どうするおつもりなのか……」
 言ってはいけない発言である。だが、そう見えないこともない。隠し子説と幼女趣味説。どちらもどちらであるのだが。
「でも、それは外の漏れなかったらいい話でしょ? あの子を外に出さなきゃ、後は僕達の間で黙ってれば、何も問題ないわけだし」
「…つまり、ばれたとしたら、俺らの中でって事になる。そうなったら、レヴィアスさまはどう出るか…だな」
 しばしの沈黙。だが、逆に考えれば、ばれないようにしたら問題はない話である。元々、この屋敷は広い割に人は少ない。その分のセキュ
リティも万全なのだ。
「気をつけないと、仕事と家なくして、路頭ってカンジ?」
 あっけらかんとジョヴァンニは笑うが、はっきり言って、洒落にも何にもなっていなかった。


部下達、可哀想……。強く生きてね。ジョヴァンニはここでも、強かだけどね。


‖<Angel Days>‖ <> ‖ <> ||