「ショナはどうでもいいのか?」 「あまり深く考えない方がいいよ。ウォルター。この僕も時々あの人は理解できないから」 「ははは。ショナが判らないんだったら、馬鹿の俺じゃ無理だな」 からからと笑い飛ばすのはウォルターという。頭は良くないが、体力面はゲルハルトと並ぶほどの持ち主である。 「でも、可愛い子だよな。ああしてると、まるでレヴィアス様の娘みたいだ」 などと、周囲の雰囲気も考えずに言ってしまう所もあるが、決して、悪い人間ではなかった。 「ウォルター、レヴィアス様に失礼だぞ!」 キーファーがいさめる。だが、その言葉に声を上げて笑い出す者もいた。 「よく言ったね、ウォルター。僕もそう思ったもん。みんなだって、そうなんじゃない? あ、お子様は別にして」 からからと笑うのは、一見、艶やかな女性を思わせる青年。名は、ジョヴァンニといい、取引や営業関係の業務を一手に担っている。 その外見と裏腹に、上手に嘘と本音を使い分ける能力はレヴィアスの部下の中では一番ともいえる。 「でも、レヴィアスさまの隠し子にしたら、可愛すぎだよ。もし、そうなら、もっと、世を拗ねた顔をしてるはずだもんね」 「ジョヴァンニ、口が過ぎるぞ」 「だって、キーファー。本当のことでしょ? だから、誰もその可能性を言い出せなかったんだし」 そう言って、アンジェリークの顔を覗き込むジョヴァンニ。きょとんと首をかしげて、アンジェリークはジョヴァンニを見つめた。 「可愛いよね。凄く素直な瞳をしてるし。まだ、何も世の中のことをわかってないんだよね。こういう瞳を見ると、汚したくなるんだよね〜」 「ジョヴァンニ。ここを出て行きたければ、今すぐにでも出てもらってもかまわぬのだぞ」 レヴィアスの鋭い視線にジョヴァンニは軽く肩をすくめる。 「わかってますって。冗談に決まってるでしょ。いくらなんでも、レヴィアス様を敵にまわすほど、僕は馬鹿じゃないしね」 クスクスクス。何処まで本気なのか。彼にとっては、こんなやり取りすらも遊びの延長なのかもしれない。 「で、でも。可愛いね……」 「ルノー?」 「天使様って、本当にいたんだ……」 周りが驚く中、おずおずとルノーがレヴィアスに近づく。いや、アンジェリークにというべきか。普段は大人しく、ユージィンの陰に隠れて いるはずのこの少年が取った行動は、レヴィアスの部下の誰をも驚かせた。 「は、初めまして。え、えっと、アンジェリークだったね? ぼ、僕の名前はルノー。レヴィアス様の元で働かせてもらってるんだ。よ、よろしく ね……」 「……」 ルノーの挨拶にアンジェリークはにっこりと笑う。それはとても、あどけなく愛らしく。 「あ、笑ってくれた……」 思わず、レヴィアスを見上げてしまう。だが、レヴィアスは何も言わずにアンジェリークをルノーの目線に会う高さに抱きなおしてやる。 「子供は子供と気が合うんだな……」 「カーフェイ。あなたは黙っていなさい」 ギロリ…とユージィンがきつい視線でカーフェイをにらむが、それを気にする彼ではなかった。 「こ、この子って、レ、レヴィアス様を、お、お守りしてくださる天使様なのかなぁ……」 あまりにも子供らしく、可愛らしい発言。だが、ここで笑い飛ばすと、ユージィンに何をされるかわからない。 「ルノーはアンジェリークを気に入ったのですか?」 「う、うん。だ、だって、レヴィアス様の天使だから……」 「そうですか……」 しみじみと頷くユージィン。ルノーを猫かわいがりしている彼のこの後の発言は容易に想像がつく。 「ならば、私もそうですよ。レヴィアス様、さっそく部屋の手配をしてまいります。ルノー、手伝ってくださいますね」 「う、うん……」 保護者役のユージィンのその発言に嬉しそうに笑うルノー。それを見て、満足げな顔をするユージィン。ある意味、利害の一致といえるの かもしれない。 「うーん、あそこまで露骨だと、かえってすがすがしいかもな……」 「それこそ、あの坊やがよければ、それでいいって?」 などと、単純明快に会話を交わすゲルハルトをウォルター。 「しゃれにならないと思う……」 ボソリ…と、ショナが呟く。その頭脳と引き換えたかのようにどこか情緒が少ない少年は物事を適切に言い当ててしまうところがある。 |
ルノーはここでもいい子です。ユージィンはやっぱり相変わらずみたいです。
‖<Angel Days>‖ <4> ‖ <6> ||