| 「何ですか、それは……?」 レヴィアスに昔から使えているカインですら、館に戻ってきた彼の腕の中の存在に半ば引きつった顔をしていた。 「見て判らぬのか。天使だ。名はアンジェリークだ。我が名づけた」 「いや、それはわかるのですが……」 真っ白な純白の羽根はどう考えても天使の証である事はわかる。問題は何故、レヴィアスがそれを連れているかだ。 「何処でそのようなものを……」 「庭にいたら、ふわふわと浮かんでいたので、連れて帰ってきたのだ」 「浮かんでいたって……」 確かに天使は羽があって、空を飛ぶ事ができるから。ふわふわと飛んでいたのだろうという事はわかる。レヴィアスに すぐに懐いたということも。レヴィアスの腕の中で興味深そうに自分を見つめてくるあどけない瞳。 純粋で、穢れを知らない。それゆえにまっすぐに見つめてくる大きな瞳。だが、それは決して不快ではないもの。 目が合うと、にっこりと笑顔。曇りも邪心も何もない笑顔。思わず、心を和ませてしまう効果は、まさしく天使の笑顔と いうべきか。 「で、その天使をどうなさるのです?」 「見て判らぬのか?」 長年の秘書経験から、レヴィアスの行動のパターンはわかりきっているので、こんな事を聞くのも愚問である。だが、 一応は聞いてみるのも礼儀。 「まさか…とは思いますが……。ここに置かれるのですか?」 「判っているのなら、聞く必要はないだろう? いつも言っていることはまだ身につかぬか? あと、この者の部屋と必要な 生活用品をユージィンに用意させておけ」 「レヴィアス様……」 予想していた答えとはいえ、ため息をつきたくなる。確かに可愛らしい存在だ。レヴィアスにもその無邪気な笑顔を向けた のだ。いや、人間でない存在だからこそ、彼をただの一人の人間として、認めることができるのだ。 あるがまましかを見ないから、レヴィアスの本質を見抜いたのかもしてない。異彩を放つ瞳の奥に住む何か、を……。 だが、それとこれとは話が別なのだ。 「ここに置かれるということは我々と共に住むという事ですよね……?」 男所帯の中で、ふわふわと飛んでいる愛らしい天使の姿はあまり想像したくないものがある。 「別に今更、この屋敷にいるものが増えたとしても困る事はないだろう」 「確かにそうですが……」 レヴィアスの言うとおり、この屋敷は広い。レヴィアスと彼の部下が住んではいても、部屋が余るほど。レヴィアスにして みれば、問題はないのだろうが。 「しかし、他の者の意見は……」 「嫌なら、この屋敷を出れば住む事だ。別のここにすまなくとも、仕事はできるだろう?」 「それはそうですが……」 何を言っても通じない。そういうことだ。自分の意見ですらこれでは他のものの意見も通らぬだろう。 カインの危惧どおり、その小さな天使を見たときの彼らの反応はさまざまなものだった。 |
カイン、可哀想……。
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