日の曜日、マルセルは庭の花の手入れをしたりと充実した一日を過ごしていた。少なくとも、めったにない来訪者が訪れるまでは。
「えーと……?」
 執事に呼ばれ、あわてて応接室に向かえば、首座の守護聖ジュリアスと、その補佐役とも言うべきオスカーがいて。それだけでも、
戸惑わざるを得ないのに、ジュリアスの腕の中にはいつもゼフェルにくっついてやまないはずの小さな天使、アンジェリークの姿が
あって。その顔には涙のあとがあり、どこか憔悴している。
「……あの?」
 一瞬、固まってしまったマルセルにジュリアスは眉間にしわを寄せつつも、小さな天使をおびえさせないためか、それを正そうと
している。
「私とオスカーが乗馬をしていたら、私の馬がこの者を見つけたのだ。事情を聞いても、泣いてばかりで話にならないのだ。そなた
なら、このものと意思をかわせるだろう? それと、このものの緊張を解くために何か出してやってくれ」
「はい、わかりました」
 事情を聞いてみると、なんだか微笑ましい。怖いばかりだと思っていたジュリアスの意外な一面を見た気がしたマルセルであった。
「えーと、シュークリームがあったよね? あれを出してもらえるかな? あと、ジュリアス様にはエスプレッソ、オスカー様にはカプ
チーノ。僕とアンジェはアイスココアで」
「かしこまりました」
 執事に頼むと、マルセルはしゃがみこんで、ジュリアスの腕に抱かれたアンジェリークに視線を合わせる。
「もうすぐ、おやつが来るよ? シュークリーム、好き?」
「……」
 マルセルの言葉にアンジェリークはこくりとうなずく。
「そっか、よかった。イチゴのタルトは今日はないんだ。ごめんね?」
「……」
 ふるふるとアンジェリークは首を振る。その様子にマルセルはくすりと笑う。やがて、執事が人数分の飲み物とシュークリームを
持ってきてくれた。
「ジュリアス様、アンジェを貸してもらえますか」
「あ、ああ……」
 こわごわとアンジェリークを抱いて、手渡す様子を見て、マルセルはなんだか嬉しくなる。怖いと思っていたジュリアスは思って
いるより優しいのかもしれない。
「はい、アンジェ。シュークリーム」
「……」
 いつもなら、両手を挙げて喜んでいるはずなのに、今のこの小さな天使はそれを手にとって、切ないため息をつくだけ。
「シュークリーム好きじゃない?」
「……」
 ふるふるとため息をつく。そして、ぱくりと食べ始める。甘い甘いシュークリーム。けれど、その味の半分もわからなくて。切なくて、
また涙がこぼれる。
「ねぇ、ゼフェルはどうしたのかな?」
 マルセルはアンジェリークの頭をなでながら、ゆっくりと問いかける。アンジェリークは切ない瞳で首を振る。
「いないの? いなくなったの?」
「……」
 こくこくとうなずく。
「置いていかれたの?」
「……」
 その問いかけにはアンジェリークは首をかしげる。
「えーと。いつの間にかいなくなったの?」
「……」
 その言葉にアンジェリークは悲しそうに頷いた。その返事にマルセルはジュリアスとオスカーに視線を向ける。
「そういうわけだそうです」
「……わかった。ならば、あのものを探すしかないようだな。オスカー」
「わかっております」
 ジュリアスが全部言う前にオスカーは立ち上がって部屋を出て行った。
「では、我々はゼフェルの屋敷であのものが帰ってくるのを待とう」
「はい」
 自分もすっかりメンバーに入れられている。それをどうとればいいのかと思いつつ、マルセルはアンジェリークに話しかける。
「一緒にまとう。そしたら、寂しくないよ?」
「……」
 マルセルのその言葉にアンジェリークはこくりと頷いた。

マルセルはこういうときには頼りになるらしい……。で、オスカーはパシリ?

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