ぱたぱたぱた。頭上でぱたぱたと羽ばたくのは小さな天使以外の何者でもない。ゼフェルの頭の上が
よほどのお気に入りのようで、執務が終われば、まずはゼフェルの頭にしがみついてしまう。
「あんたの頭が刷り込みだったのかねぇ……」
 そう言いながら、夢の守護聖様は可愛らしいアクセサリーで天使の気を引くと、ゼフェルの上から天使を
はがしてくれた。…といっても親切心ではなくて。そのふわふわの巻き毛をブラッシングして、髪を結い始め
てしまう。要は可愛いおもちゃを楽しんでいるといったところか。
「♪」
 鏡を前に置かれて、自分が可愛くしてもらっていることを知っているのか、アンジェリークはおとなしくして
いる。ニコニコと愛らしい笑顔は変わらないまま。
「こんなに慕われてるのに、何が不満なんだよ?!」
「始終頭にしがみつかれる俺の立場になってみろ、この青春野郎」
 理解してくれない彼らに訴えては見るが、効果はない。マルセルはさりげなく一刀両断だ。
「でも、執務中はおとなしくディア様の元にいるんだし〜。ゼフェルになついてる割にはいい子だよね?」
「?」
 ねぇと、小さな天使に同意を求めてみても、アンジェリークは首を傾げるだけ。すりすりとゼフェルに懐いて
離れない。
「おめえにやろうか?」
「駄目だよ。ゼフェルが大好きなんだから、この子は」
 ゼフェルの提案をすぐさま却下する。
(ま、こいつらにとっては他人事だろうからな……)
 確かに小さなアンジェリークは可愛いだろう。けれど、それが始終張り付いて離れないのがどれだけうっとう
しいか。


「お帰りなさいませ」
 家に帰れば帰ればで、使用人や執事たちは主であるゼフェルよりも小さな天使を気遣う始末だ。(もっとも、
普段はうっとうしいから、必要最低限以外はかまうなといっているのはゼフェルである。)
「♪」
 食事時には…使用に甘いおかしなどを用意しており、ゼフェルから離れたがらないアンジェリークはゼフェルの
ひざの上で食事を取る。さすがにそれでは自分が食事を取れないので、アンジェリークが食事を終えるまでの間は
ゼフェルは何も食べられず、甘い香りと戦うのだ。風呂はディアが帰る前に入れてくれた。
「汚さないようにしなさいね」
と、釘を刺されて。この、なんにでも興味を持つ小さな天使の興味をそぐためにはまっすぐに帰宅せねばならない。
それもある意味ストレスがたまる。夜はゼフェルが眠るまで、離れたがらない。ゼフェルの生活はすっかりアンジェ
リークを中心に回さねばならなくなり、ストレスは確実にたまっていた。



頑張れ、お父さん(違う)

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