ぱたぱたぱた…。人待ち顔で小さな天使は扉を見つめる。それはどこか切なそうな表情で。
「……」
「ゼフェルが恋しいのですね……」
 どんなにお菓子やおもちゃでなだめてみても、小さな天使が待ってるのはただ一人で。
「切ない顔してても可愛いんだよね〜」
 お気に入りのリボンで飾ってあげても、アンジェリークはこっちを見てはくれない。
『離せ〜!!!』
「!」
 遠くから聞こえる絶叫に反射的にアンジェリークは顔を上げる。切ない顔は嬉しそうな表情になる。
「♪」
 ぱたぱたと元気よく羽ばたく羽の音。小さな天使の喜びの発動とでも言うのだろうか。
「ディア様、連れてきました〜」
 明るい声で入ってくるマルセル。そして、オスカーに引きずられてくるゼフェルの姿。アンジェリークの
表情は満面の笑みの輝きになる。
「〜♪」
「おわっ!!」
 突進してきた小さな天使に思わずのけぞりそうになるゼフェル。何とかそれをやり過ごしたと思ったら。
「こ、こら。離れろ!!」
「♪」
 嬉しそうにゼフェルにくっついて離れない小さな天使。引き離そうとしても、いやいやと首を振って離れ
ようとしない。
「愛されてるね、ゼフェル〜」
「オリヴィエ、笑ってんじゃねぇよ!!」
 困っているのはゼフェル一人で、後はは小さな天使がゼフェルに必死でくっつこうとしている可愛らしさを
楽しんでいるようだ。ゼフェルの意思はともかくとして、それはとても可愛らしい光景なのだから。まぁ、いつ
までもこうしていると、せっかく用意した昼食が冷めてしまう。
「アンジェリーク。ゼフェルは逃げませんから。お昼にしましょう? おなかがすいてるでしょ? ゼフェルも
おなかがすいていると思いますよ」
「……」
 諭すようなディアの言葉にアンジェリークはしぶしぶといった様子でゼフェルから離れる。自分が空腹だ
からか、ゼフェルがおなかがすいているからだと思ったからか、アンジェリークの表情からは読めなかった。
「じゃあ、お昼にしましょう。皆さん、席について下さい」
 結局はお昼に付き合わざるを得ないゼフェルなのであった。
「♪」
 ひざの上に小さな天使を載せている状態で食べるのはタコスである。天使を膝に乗せた状態で食べられる
ものがいいだろうと判断してくれた結果だ。堅苦しいコース料理よりはずっといいけれど、天使が膝の上という
状態はやっぱり複雑なのである。
「いいなぁ、ゼフェル……」
 可愛いものが大好きなマルセルは本気でうらやましそうであるが、本気で変わってやりたいと心の中で絶叫
するゼフェルなのであった。



ゼフェル、哀れかも……(今更、か)

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