まだ人通りがない時間帯。ゼフェルは早足で聖殿への道を急ぐ。
 ぱたぱたぱた。頭上ではアンジェリークがゼフェルにしっかりとしがみついている。
「ったく、何で俺が……」
 いつもだったら、守護聖の仕事だなんて、やってられないとばかりに時間ギリギリまで、出なかったり、
聖地を抜け出したりが常のゼフェルである。急に仕事熱心になったわけではなく、頭上の小さな天使を
何とかするためである。
「♪」
 無邪気に…と言うより、脳天気にゼフェルにしがみついているアンジェリークはゼフェルから離れたがら
ない。聖殿にいけば、ディアが面倒を見てくれる。それだけがゼフェルの救いだった。
 だから、朝早くに屋敷を出たのだ。もっとも、この小さな天使を連れて歩く姿を見られたくないというのも
本音である。
「あら、早いですね、ゼフェル……」
 クスクスと何もかもを理解していますといわんばかりのディアに思うところがないわけではないが、文句は
言っては行けないし、言える立場ではないことは理解している。
「いらっしゃい、アンジェリーク。これから、ゼフェルにはお仕事がありますから……」
「……」
 その言葉を理解しているのか、ぱたぱたと羽根音を響かせて、アンジェリークはゼフェルの頭から手を
離す。ようやく得られた解放感に安堵のため息をついた。
「おやつにイチゴのタルトを用意してるのよ」
「♪」
 ディアのその言葉にさみしげだった羽音に元気が出る。ゼフェルと離れる寂しさをうまく摩り替えてくれた
ようだ。
「ゼフェル、執務時間中はアンジェリークを預かりますから、何の心配もなく執務に励んでくださいね」
 ニコニコニコ。穏やかな笑顔の裏には有無を言わせぬ何かが存在している。もし、ここで悪態をつこうもの
なら、どうなることか。
「アンジェリーク、ゼフェルに行ってらっしゃいの挨拶をしなさい」
「♪」
 小さな手を一生懸命に振る姿は幼子が父親を見送る光景を思い出して、何と無く嫌な気分になる。父親
だなんて、冗談ではない。
「おはようございます!」
 ぱたぱたとやってきたのはマルセルだ。手には朝つんだばかりの花を入れたかごが二つあった。
「♪」
「おはよう、アンジェ。これは君にね♪」
 小さな花かごを渡すと、アンジェリークはパタパタと羽根を動かして、喜びの意思を表す。
「こちらはディア様にです」
「まぁ、ありがとう、マルセル」
 ある意味、オスカーよりも女性の扱いに長けているのかもしれない…と、ゼフェルは思った。

天使はぷりちーに書こうと努力しています……。

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