ぱたぱたぱた……。夜明け近くに眠ったゼフェルの耳に届いたのはこんな音。
「ん……」
 ぱたぱたぱた……。耳元でしきりに聞こえる音は未だに睡魔の中にいるゼフェルの耳に嫌でも届く。
「るっせえな……」
 ぱたぱたぱた……。
「静かにしろ……」
 てっきり、使用人が勝手に部屋に入って何かをしているのだろうのかと思い、声をかけてみるが……。
 ぱたぱたぱた……。けれど、音がやむことはない。
「ったく、静かにしやがれ!」
「!」
 ガバッと起き上がると、驚いたように空中で固まる小さな天使、アンジェリーク。それでも、翼はパタパタと
動いている。ある意味、器用だなとも考えてしまう。
「って、おめーかよ……」
「……」
 こくこくと頷くアンジェリークはじっとゼフェルを見ている。どこか、おびえが入っている。
「別にてめーをしかった訳じゃねえよ」
「♪」
 さすがに寝起きの八つ当たりは悪かったかもしれないと思って、フォローしてやると、アンジェリークは
嬉しそうに笑った。
「こ、こら。抱きつくな」
 現金なもので、ゼフェルにぎゅっと抱きついてきさえする。
「あのな、俺は夜遅かったんだ。だから、まだ寝る!」
 そう宣言すると、すぐにベッドにもぐりこんでしまった。
「……」
 ぱたぱたぱた……。枕元で小さ…な天使が羽根音を立てる。
「……うるせえ」
「……」
 ぱたぱたぱた……。その音がどこか悲しげに聞こえるのは、なぜだろうか。
「……」
「……」
 ぱたぱたぱた……。ぎゅっとゼフェルがかぶっている毛布のすそを掴んでくる。小さな手であるはず
なのに、それがすごく伝わってくる。
「ああ、もう!」
 再び、ガバッと起き上がると、再びアンジェリークも抱きついてくる。
「ったく…」
 アンジェリークに抱きつかせた大成のまま、ベッドから起き上がると、ゼフェルは部屋を出た。
「おはようございます、ゼフェル様。今日はお早いですね」
「おめーがこいつを俺の部屋に放りこんだんだろうが!」
 昨日は別の部屋でアンジェリークを寝かしたはずなのだ。今朝、アンジェリークがゼフェルの部屋に
いるのは、誰かがアンジェリークをゼフェルの部屋に連れ込んだということだ。
「朝、目を覚まされましたら、ゼフェル様を探しておられましたので……」
「俺の安眠はどうでもいいのかよ……」
「夜更かしなされる方には、同情できませんから」
 きっぱりと言い切る執事ではあったが、アンジェリークを見つめるまなざしは優しかった。

ひねくれもののご主人より、大切にされてるよアンジェ……。

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