ゼフェルは元来、夜型人間だ。この日も徹夜の作業をするつもりだった。そう、つもりだったのだ。
「♪」
 何が嬉しいのか、ゼフェルの周りをアンジェリークは飛び回る。これでは落ち着かないことこの上ない。
「ほら、夜も遅いんだから、寝ろよ!」
「……?」
 どうして、と抗議の視線。ゼフェルは起きているのに、自分が眠るだなんてといったところか。アンジェリークの
ベッドは客間のものを使わせるつもりだった。何年も使っていないものを使用人たちがフル特急で掃除してくれた
ものだ。
「……ほら、俺はまだやることがあるから、起きてんの! おめーは飛び回るしかねだろうが」
 説得を試みてみるが、言うことなんて聞くはずがない。聞いていたら、そもそもゼフェルが苦労するはずもない。
「〜」
 ついにはゼフェルの頭にしがみついて、いやいやと抗議の態度。それは傍目から見たら、たいそう愛らしいので、
その様子を見ている使用人も執事も口出しすらしない。
「てめーら、主人が困ってんだぞ! 何とかしやがれ!」
「しかし、その方は大切な預かり物でしょう? 失礼があると困りますから」
 もっともらしく、執事は言ってのける。
「お休みになるまで、ゼフェル様がお側にいてあげるというのはどうでしょうか? もしくは作業場にベビーベッドを
置かれるなり」
「……寝るまでそばにいるほうがましだな」
 面倒なことこの上ないが、ベビーベッドを置いたら、ただでさえ散らかっていて狭く感じるあの部屋がますます
狭く感じられることこの上ない。人間、多少の妥協は仕方がない。
「仕方ねえな。アンジェ、寝るぞ!」
 未だに頭にしがみついたままの天使とともに、ゼフェルは客間に向かった。
「ほら、ベッドに入れ!」
「……」
「でないと、眠れねえだろ?」
「……」
 しがみついていた腕の力が緩んだかと思うと、パタパタとアンジェリークがゼフェルの視線の高さになってくる。
「どうした?」
「……」
 ゼフェルは?と、問いかけてくるまなざし。ここで、俺は寝ないなどといったら、きっとアンジェリークはしがみ
ついて離れない。いい加減、学習したゼフェルである。
「一緒に寝てやるから、な?」
 どうして、そこまで妥協してやる必要があるのかとは思いつつ、アンジェリークを抱いて、ベッドの中に入る。
「♪」
 しばらくは嬉しそうに笑顔を見せていたアンジェリークであったが、やがて、小さな寝息を立て始めた。
「寝てる顔は本当に天使だけどなぁ……」
 これから先のことを思って、ゼフェルは深くため息をついた。。

寝てると天使なのは赤子の共通……
|| <Pureness Angel> || <10> || <12> ‖