「ほら、ばんざいして!」
「〜」
万歳のぽーずで、両手を上げさせて、無造作に服を脱がせると、ゼフェルはそれを洗濯籠にほうりこんだ。
使用人の誰かが洗ってくれるはずだ。
「…って、こいつの着替え……」
脱がせた時点で、肝心なことを忘れていた。オリヴィエやディアが用意してくれているとはいえ、今は遅い
時間で。取りに行くのには、遠慮したほうがいい時間だ。
(…何で、俺がこいつのためにわざわざ出向かなきゃならねぇ……)
という、複雑な心もある。しばらく思案していたが、クローゼットをあさってみると、ちょうどいいものが出て
きた。
「これなら、いいか?」
タンクトップを手にして、着せてみる。少しばかりだぼだぼではあるが、問題はなさそうだ。
「よし、じゃあ。風呂だな!」
パタパタ飛び回る天使を捕まえて、ゼフェルは浴室に向かった。
「〜♪」
「こら、おとなしくしやがれ!!」
浴室にゼフェルの怒声が響き渡るが、アンジェリークは楽しそうに飛び回りながら、風呂にあるものをあたり
かまわず触っている。石鹸とシャンプーくらいしかおいていないのだが、ぷくぷくと泡が出るのが楽しいのか、
石鹸やシャンプーで遊ぼうとするのだ。それを何度か押さえつけ、ゼフェルは小さな天使を洗いにかかった。
「ったく……」
小さな天使に付き合った聖で、ゼフェルもずぶぬれである。一緒に風呂に入ったほうが早かったかもしれ
ないとは思いつつ、後悔は先にたたず。よく言ったものだ。
ふわふわの金の髪が絡み合わないように洗って、全身も泡だらけにしつつ洗い上げると、奇妙な達成感に
襲われた。
「……疲れた」
「♪」
風呂上りに上機嫌にパタパタ飛ぶ天使と、ぐったりとソファに埋もれるゼフェル。ずいぶんと好対照だ。
「ごくろうさまです」
執事の入れてくれたミネラルウォーターがこんなにも美味しく感じるのは、一仕事終えた達成感からかも
しれない。なぜか、そう思ってしまうゼフェルであった。
「急いで、洗濯しておきますね」
「ああ、悪いな」
ゼフェルのタンクトップを着て、パタパタ飛び回るアンジェリークを見て、何か思うところがあったのだろう。
口にしない分、気が楽だとゼフェルは思った。
「アンジェリーク様、ジュースですよ」
「♪」
ジュースの入ったストロー蓋つきのコップを差し出すと、アンジェリークは嬉しそうに飲み始める。
「よくあったな、そんなもん」
「……リサイクルです。ストローはもちろん新しいものですが、ちょうどゼフェル様が帰宅する前に、公園で
テイクアウトでジュースを買ってきたものがいましたから」
「……生活の知恵だなぁ」
思わず、うんうんとうなずいてしまうゼフェルである。けれど、ジュースを美味しそうに飲んでいる小さな天使
にはもちろん関係のない話であった。
風呂は大変だろうな、やんちゃなこだから
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