ふわふわと焼き上げられたホットケーキにはメイプルシロップとバターがたっぷりと。横には、苺ジャムやら、
生クリームやら甘ったるいものが添えられていて。見ていて、ゼフェルは胸やけがした。
「何で俺の前に出すんだよ……」
「頭の上におられますから」
ゼフェルの苦情に有能な執事はしれっと切り返す。
「わーったよ。おりろよ。飯だからな」
「♪」
ゼフェルの頭の上よりもご飯を選んだらしいアンジェリークはパタパタとゼフェルの膝の上に。それはそれで
うっとうしい。
「こいつの椅子はないのかよ!」
「聖地では赤ん坊用の家具を取り寄せるのには時間がかかりますので……」
「……わかった。俺が何とかする」
主人の器用さを知っている執事は彼がその気になるように持って行くのには慣れたものだ。位置から作るので
あれば、材料の気を手配すればいいし、何かを作り直すのなら、それでいいとは思う。
「♪」
当事者である小さな天使は美味しそうにホットケーキを食べている。小さく切り分けているおかげて、食べやすい
らしく、ご機嫌であった。
「お口に合いますか?」
と、シェフが問いかけてみると、ご機嫌な顔で頷いてくる。自分の主とは偉い違いだ。不満には思っていないが、
喜んでもらうと嬉しいのが人情である。嬉しそうな顔をするシェフに対して、ゼフェルはいささか複雑な心境であった。
(主は俺だよな……?)
別に権力者ぶるつもりはないけれど、こうもあらかさま名態度だとやはり内心では面白くない。確かに無愛想だし、
出されたものに文句は言ってもほめることはあまりないから、仕方ないとは思いはするが、アンジェリークは客人、
もしくは居候の立場だ。それなのに、すっかりなじまれている。執事などは顔には出さないものの、態度で見え見え
である。
「〜」
食べ終えると、入れてもらったアイスココアを飲んで、すっかり満足した様子だ。アンジェリークが食べた皿を下げ
させると、ゼフェルは自分の分に用意された食事を食べ始めた。
「……」
「こら、お前は食うな。辛いんだからな」
未だにゼフェルの膝の上にいるアンジェリークはスパイス料理に手を伸ばそうとする。それを何とか止める。
「……」
不満そうな顔をするアンジェリークにゼフェルはスプーンの先に少しばかり着いたソースを舐めさせてみた。
「〜!」
途端に顔を真っ赤にさせて、咳き込むアンジェリークにゼフェルは水を飲ませると、恨みがましそうな目で見上げ
られた。
「そのような幼い子に……」
「俺が悪いのかよ!」
執事の冷たい視線に思わずゼフェルは毒づいた。
久しぶりすぎて、泣けます。って言うか、やっぱり、久しぶりでもゼフェルが可哀想……。
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