ゼフェルはもう何度目になるか判らない説明をみんなの前でする。もちろん、自分が抜け出そうとしていたことは置いといて
ではあるが。まぁ、聖地は何があっても不思議ではない環境であるので、結構あっさり納得してもらえた。
「そういうことで、なんとかいしてくれよ、これ……」
相変わらず、自分の頭の上でくつろいでいる天使を指差し、げんなりした顔をするゼフェル。
「これではなくて、アンジェリークでしょう? クラヴィスがそう言ってたし」
「そういう問題じゃねぇよ!」
オリヴィエの指摘にゼフェルは声を荒げる。天子の名を持つ天使。何だか変な感じではあるが、クラヴィスがそういうのなら、
そうなのだろうという不思議な感覚をみんな持っている。
「水晶球には映し出されなかったのすか?」
「……光が見えた。おぼろげな光が。それがこのものかも知れぬ。だが、それはここにあるべき光ではない」
「?」
「判らぬか?」
その言葉はゼフェルにではなく、ジュリアスとルヴァに向けられている。その言葉に二人は反射的に顔をあげる。
「まさか……?」
「あれ、ですかね……」
三人にだけわかる何かにほかの守護生たちは顔を見合わせる。普段は仲が悪いとされる光と闇の守護聖とその間を何とか
やりくりしようとしている地の守護製。だが、三人は彼らの中でも長老的存在であり、いざというときには本当に頼りになる人物
たちだ。
「わかった。陛下の意見を仰ぐほうがよかろう」
「そうですね。私も調べて見ます」
三人の間で、あっさりとこれからのことが決められてしまう。こうなると、残されたほうは訳がわからない。
「ジュリアス様、どういうことなのですか?」
思わず、オスカーがたずねてみるが、三人ともあいまいな表情をしているだけだ。
「あのですねぇ、この子自身には何も問題はないんですよ。ただ、この子は時の迷い子のようなんですよ。元の世界に戻して
あげるには、陛下のお力が必要かもしれませんので、時間がかかりそうなんですよ」
かわりにルヴァが答えるが、あまりにも漠然すぎた答えにやはり誰もが納得いかないといった顔をする。
「とりあえず、この者は聖地にとどめておく必要がある。ゼフェルになついているのなら、ゼフェルにこのまま任せよう」
「ちょっと待て、勝手に決めるなよ!」
ジュリアスのその言葉にゼフェルが慌てる。何とかなると想って全員を集めたのではなかったのか。
「だが、お前に一番懐いているだろう? 執務中はディアに預かってもらうといい。ディア、それでいいな?」
「ええ。かまいませんわ。私は子供が大好きですし」
にっこりとディアが笑う。
「ほかの者も、ゼフェルに協力してやるように。私からは以上だ」
一方的に言い放つジュリアスにゼフェルは怒りがとまらない。だが、時すでに遅く。それが決定事項になっていた。
「じゃあ、この子の服は私が作ってあげるよ。とびっきり可愛いのね」
「僕も手伝うよ」
「俺も、小さい妹がいたから、わからないことは聞けよ?」
一方的に協力を申し出るものまで出てくる始末。ゼフェルの意思は完全に無視されている。
「何でこんな目にあうんだよ……」
深くため息をつくゼフェルの頭上で、アンジェリークと認識された小さな天使は小さくあくびをしていた。
ゼフェルの不幸はまだまだ続きます……。
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