「これも食べてもいいですよ〜」
「これもおいしいよ」
目の前に積まれた甘ったるそうなお菓子の山にゼフェルはげんなりとする。もちろん,彼が食べるのではない。今、膝の上で
幸福そうにカップケーキを食べている天使に、だ。
「おめーら。こんなに食えるわけねぇだろうが」
「だって、食べないと大きくなれないよ?」
「……」
これが他の人間だったら、いやみとして取っていたが、マルセルの言葉に他意はない。
「……」
不意に小さな天使が首をかしげて、ゼフェルとお菓子を交互に見る。“食べないの?”と、首をかしげはじめもした。
「俺はいらねぇよ」
そういって、しぶしぶとお茶をすする。どうも、ペースが崩されている。
「……」
不意に天使がが不思議そうな顔で、ゼフェルを見上げてくる。
「な、何だよ」
思わず身構えてしまうゼフェルに小さな天使はは“食べないの?”と、クッキーを差し出してきた。
「いらねぇよ!」
思わず一喝で返してしまうと、途端に顔を曇らせる。今にも泣きそうな表情だ。泣かれるのも厄介なので、ゼフェルは慌てて
フォローに入る。
「あ、悪かった。俺はいいんだよ。ほら、おまえのだから、おまえが全部食っていいんだ」
「……」
じんわりと瞳に涙を浮かべて、クッキーを持ったまま。食べるまでは無理そうだ。
「ああ、食うよ。食えばいいんだろ!」
ひったくるようにクッキーを受け取って、口に入れる。
(甘い……)
天使に、と甘いものばかりを出したのだから、仕方ないのだが。表情に出さなかっただけでも、表彰ものだ、と自分自身で思う
ゼフェルであった。
もう一ついる? と笑顔で差し出してくる天使にゼフェルは背筋が凍りそうになる。だが、天使の頬にクリームがついている
ことに気づくと、そこに功名を見出した。
「こら、頬にクリームがついてる。ここにも、だ。ああ、こぼすんじゃねぇよ」
頬についたクリームを拭いてやると、んーんとアンジェリークは目を閉じる。
「ルヴァ様、ゼフェルって優しいですよね」
「そうですね〜。それがゼフェルのいいところなんですよ〜」
本人に聞こえないようにこっそりと話題を振るマルセルにルヴァはうんうんと頷く。
「何だかんだいって、面倒見がいいからね」
くすくすとオリヴィエも笑う。
「何笑ってんだよ、おめーら!」
視線が注目していることに気づき、思わずと怒鳴ってしまう。だが……。
「――!」
おびえたように身をすくめてしまった小さな天使にゼフェルは頭を抱える。
「おい。おめーに言ったんじゃねぇよ……」
困った顔で天使に対応しているゼフェルにやはり面倒見のよさを感じた3人であった。
お茶の間は天使はゼフェルのひざの上でもおとなしくお菓子を食べており、とりあえずはまったりと時間がすぎてゆく。
「じゃぁ、そろそろお開きにして、この子を何とかしないといけませんねぇ……」
「はぁ?」
「お茶の準備をしている間にねぇ、ディアとジュリアスへの手紙を手紙の精霊に持たせましたからねぇ。あの二人なら、安心して
事態の収拾を図れるでしょうしねぇ」
「ちょ、ちょっと、待てよ!」
冗談ではない。そうなると、どうして、この天使を見つけたかという状況を聞かれてしまう。聖地を抜け出そうとして、見つけました
などと知られたら、どうなる事か。
「ですがねぇ、ゼフェル。解決を図らないと……」
そう言いながら、ルヴァはゼフェルのひざの上にいる天使を抱き上げる。
「な、何なんだよ」
「いつまでも、この状態なんですけどねぇ……」
パッと、ルヴァが手を離してしまうと、途端に天使はゼフェルの頭にしがみついてしまう。
「な、何しやがる!」
こうなってしまうと、どんなに頭を振ったところで、天使は離れようとしない。
「ね、困るしょう?」
にっこりとルヴァが笑う。裏などはまったくない分、余計に始末に困ってしまう。
「あんた、強いわ……」
思わず、オリヴィエが関心の声を上げてしまう。
「は?」
わけがわからず、首を傾げるルヴァであった。
ルヴァ様って、やっぱり強いのかなぁ……。
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