「あ、ゃぁ……」
 はだけさせた所から滑り込んできた手が胸をまさぐる。存在を主張し始めた胸の突起を指で転がしたり、摘んだり。不安定な
体勢が快楽を煽るのか、無意識に逃げる身体を押さえるうちに後ろから抱きかかえる体勢になっていた。
「や、こんな……」
 セレストの顔が見えないことが何だか不安でかつ羞恥心を煽られる。
「何がお嫌なんですか?」
「……!」
 背中に口づけを与えてから、クスリと笑みを零して、セレストはズボンの上から熱くなり始めたカナンの中心に触れる、そのまま
やんわりと包み込んできた。
「あ…っ、……」
 布越しに触れられるもどかしさにカナンは身を震わせる。セレストの表情が見えないことに不満を感じる半面、自分の今の表情が
相手に見えないことにカナンは安堵していた。きっと、今の自分はあられもない顔をしている。幾度も肌を重ねているとはいえ、慣れ
ないものは慣れない。
「カナン様……」
「セ…レスト……」
 かと言って、名を呼ばれて、振り向かされれば、素直に口づけに応じている。キスは好きだ、とは思う。でも、それはセレストと交
わすからだ。触れるだけのキスも、情熱を分け合うキスも。他の誰かにされるなんて今は考えられない。
「ん、ぅ……!?」
 キスに溺れたカナンの隙をつくようにセレストの手がパジャマのズボンに滑り込み、下着を通り越して、熱くなっているカナンの中心を
包み込んだ。既に濡れ始めていたために軽く手を動かせば、それだけで水音がした。
「ぅ……」
 直接触れられ、自らがもたらせた水音にカナンは耳を塞ぎたくなる。とめどなく先端から零れ落ちるそれはセレストが手を動かす
のに比例して。全身が敏感になって、その感覚以外は何も考えられなくなる。
「あ、もぅ…、駄目だ、セレスト……!」
 切羽詰まった声でカナンが限界を訴えてると、焦らすことなくセレストはカナンを解放に導いた。
「う、あぁ!」
 カナンの背中が大きく跳ね上がる。そして、セレストの手に熱を吐き出した。
「ふ、ぅ……」
 ぐったりと弛緩した身体をセレストに預けると、こめかみに優しいキスが落ちて来た。
「ふぅ……」
 優しい口づけに呼吸が落ち着いて来ると、今の自分の状態に気付き、カナンは赤面する。上半身のパジャマはだけて、かろうじで
引っ掛かっていて、下半身は脱がされた状態なのにセレストは襟一つも乱していないのだ。
「おまえ、ずるい、っ……!」
「は?」
「僕ばっかり、こんな……」
 カナンの訴えの意味するところに気付き、セレストは笑みをこぼす。
「そうしたいのは山々ですが、手が汚れておりますので……」
「ば、馬鹿者……!」
 その言葉の意味に気付かないほど鈍くはない。セレストの手を汚したのは自分が吐き出したものだ。真っ赤になってセレストを睨み
上げて来る。
「申し訳ありません、戯れがすぎました」
「馬鹿者……」
「ですが、何かあれば困りますし、ね」
 もちろん、それは都合のいい言い訳に過ぎない。何があってもすぐに飛び出し、主君を守るようにするのが騎士の基本。だが、この
平和そのもののルーキウス王国に滅多に事件か起こる筈もない。
「もうしばらくお待ちくださいね」
「え? あっ?!」
 カナンがその言葉の意味を捕らえる前に、濡れた指が奥に入り込んでくる。探るような動きがやがてある一点を中心に攻めてくる。
幾度も肌を重ねて知ったカナンの感じる場所。出来る限りで感じさせたい。
 自分だけのものにしたいという気持ちがないわけではない。たが、一方的な想いでカナンを蹂躙したいわけではないから。

まぁ、なんと言うか……。何も言わないで下さい……。

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