「や…っ……!」
 思わぬセレストの動きにカナンはすっかり翻弄されてしまう。
「だめ…っ……」
「駄目じゃないでしょう? こんなにしていらして……」
 布の上から、張り詰めたものをなぞると、カナンは大きく身じろいだ。
「僕がするって……」
「でも、私がしてはいけないとはおっしゃいませんでしたよね?」
 にっこりと笑顔で、先の言葉を封じてしまう。そして、唇で。抗議しようと開きかけた、唇の隙間から舌を滑り
込ませて。奥で逃げようとするカナンのそれに絡ませて。
「ん、ぅ……」
 いつしか、抵抗も忘れ、カナンの細い腕はセレストの背に回されて。それに気づいたセレストは器用にカナンの
服をはだけ始めた。
「ちょ、っ、まて……」
 セレストの意図に気づいて、カナンは唇を解いて、抗議する。
「何ですか?」
「僕が…するのに、なんで……」
「私もしたくなりましたから」
「ば、馬鹿……」
 悪態をついて、何とか逃れようとするが、それよりセレストの動きのほうが早い。
「……私に触れていて、こんなになっていてくださったんですね?」
「や、違っ……」
 口では否定していても、身体は正直に反応を示している。直に自身に触れられると、そこはすでに雫を溢れ
させていた。セレストが指を動かすと、ぬれた音が嫌でもカナンの耳に響く。
「ほら、こんなに濡らしておいでなのに?」
「やだ、言うな……」
 どんなに否定しても、身体は正直だ。セレストに触れられている時にを思い出しながら、セレストに触れていた。
『カナン様……』
 そう名前を呼ばれ、触れられる心地よさを思い出しながら、だ。自分の浅ましさに頬が熱くなる。そして、それを
セレストに悟られているのだ。
「やだぁ…っ!!」
 半恐慌状態に陥る。恥ずかしくって、おかしくなりそうだ。だが、セレストは許してはくれない。
「駄目ですよ?」
「だって、やっぱり、僕ばっかりおかしく……」
 涙目で訴えるカナンの手をセレストは掴んだ。
「カナン様、違いますから……」
「あ……」
 腕を掴まれて、触れさせられたセレストの中心は、カナンのそれと同じで熱くなっていて。その熱さにカナンは
セレストをあおぎ見る。
「あなただけがおかしくなってるわけじゃありませんから……」
 そう囁かれる声は極上のテノール。耳朶を甘噛みされながら、与えられるそれだけでぞくぞくする。
「そうでなきゃ、こうはなりませんよ?」
「ば、馬鹿者!」
 セレストのあまりのもの言葉に思わずチョップを送ろうとしたが、その手は簡単に掴まれる。そして、そのまま、
手の甲に口付けられて。
「っ…、……」
 手の甲から、指先に口付けはさらに移される。その手は先ほどまでたどたどしくセレストに触れていた手だ。
慈しむように与えられるその口付けに、

カナンの視線はそこから逸らせないまま。柔らかな唇に触れられるそのしぐさだけで、心臓の鼓動が跳ね上がる。
「カナン様……」
「セレスト……」
 緑の瞳に捕らわれる。どうして、そんなことで、鼓動は跳ね上がってやまないのだろう。
「私もカナン様に触れてもいいです、か……?」
 その言葉に逆らうすべもなく。カナンはコクリとうなずいて、セレストの肩に顔を伏せた。


いいのか、それで? セレスト的にはええんやろうか…

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