そして、少しばかり時が過ぎて。新しい宇宙の創造のために、二人の女王候補達と、試験の協力者達が
聖地を訪れた。一人は王立宇宙員の研究員、レイチェル。そしてもう一人は、スモルニィ女学院の生徒、
アンジェリーク。聖地はずいぶんと賑やかになってしまった。
「やっぱり…外からの風は色々な波紋を呼んでるわね。」
光と闇の守護聖を傍に、テラスから外を眺めて、クスクス笑う女王陛下に、クラヴィスは傍らにいた肩を
すくめる。
「波紋と言うより…大きな波のような気がするがな……。」
「クラヴィスには賑やかすぎるみたいね。」
そう言いながらも、、女王候補であり、自分と同じ名を持つ少女のアンジェリークに視線を向ける。
「スモルニィの制服、変わったのね。」
「ええ、陛下の即位を機会に変わったと聞きましたが。」
ジュリアスの言葉にアンジェリークは溜め息を吐く。
「いいなぁ……。」
「は?」
「だって…可愛いじゃない。あの制服。私たちの時のも可愛かったけど。一度でいいから、袖を通してみた
かったなぁ……。」
「陛下……。」
あどけなく言ってしまう所が彼女らしいとは思うのだけれど、やはり女王としての自覚も持ってほしいジュ
リアスとしては、たしなめざるを得ない。
「お立場をお考えください。」
「わかってるわ。だから、あなた達の前でだけ言うの。」
「……。」
悪戯っぽく笑うアンジェリーク。確かに、年少組の前で言おうものなら、大騒ぎになるとは思うのだが。
「ならば…頼んでみればどうだ?」
「クラヴィス、いいアイデアね。じゃ、今度の謁見の時にでも頼んでみようかしら。」
「陛下!」
とんでもない提案をするクラヴィスとそれに同意する女王陛下に頭を抱えたくなるジュリアスである。
「あら…私には似合わない?」
キョトンと首を傾げて尋ねるアンジェリーク。
「そう言う問題ではなくて……。」
「私は似合わないこともないとは思うが。」
「クラヴィス…そなたはどうして、そう話の腰を折る……。」
「気のせいだ。」
しれっとしたクラヴィスの態度にジュリアスは怒りで肩を震わせる。そんな様子をアンジェリークは楽し
そうに見ている。
「陛下…間違っても、女王候補にはそんなことを仰らないように。」
「わかっているわ。だから、ここだけの話、ね。」
人差指を唇に当て、にっこりと微笑む少女にジュリアスは溜め息を吐く。どう足掻いても、天使の笑顔
に勝てない自分自身に。
「それに…陛下は前のスモルニィの制服がよく似合っておいででした。それではいけませんか?」
ジュリアスの言葉に一瞬キョトンとなるアンジェリーク。だが、すぐに満面の笑顔になる。
「ありがとう、ジュリアス。あなたがそんなことを言ってくれるなんて、思いも寄らなかったけど。」
「わ…私は別に……。」
頬が紅潮する。その様子を見て、クラヴィスがふっと笑う。
「な…何がおかしい、クラヴィス。」
「別に。ただ……。」
「ただ…なんだと言うのだ?」
「おまえがそんなことを言うのをこの目で見られるとは思ってはおらなかったのでな。」
「……! クラヴィス、そなた、私を愚弄する気か!」
かっとなるジュリアス。
「二人とも、場所を考えてね。ここはバルコニーよ。みんな、見てるわよ。」
その言葉にジュリアスはあわてて、息を落ち着ける。よく考えてみたら、この目の前の少女に翻弄されて
いるだけのような気がしないでもないのだが。
「まったく…何もかもが目まぐるしく変わってゆく気がする……。」
思わず呟いてしまっても無理はない。聖地はずいぶん変わった。新しい女王は新たな息吹を常に与え
続けている。
「変わったのは聖地だけではない……。」
「クラヴィス……?」
「私もおまえも…いや、守護聖すべてもだ……。」
「そうだな……。」
天使の光、それは女王のサクリア。それに触れたものはすべて優しい心を得ることが出来る。それは守
護聖も例外ではなくて。
「陛下ー!」
バルコニーにいるアンジェリークを見つけて、マルセルが手を振ると、アンジェリークも笑顔を返す。その
様子を女王候補二人はキョトンと見ている。無理もない話だが。けれど、すべてが天使に愛されているように、
天使もすべてに愛されている。それだけの話だ…と、彼女達も気づく日が来るのだろうか。
(私を変えたのは陛下……。そして…これからも……。)
優しい天使はちゃんとわかってくれているから。自分の信じる道を歩くことが出来る。
自分を見つめるジュリアスの視線に気づいたのか、アンジェリークは振り返ると、にっこりと極上の笑顔を
浮かべる。優しい光に包まれ、満たされる心をジュリアスは改めて感じたのであった。
“君色想い”で、ジュリアスがあまりにもかわいそうだったので…。フォローしようと思って、つい…。
でも、ジュリアスとリモージュちゃんって、書いてて楽しい〜。ああ、これで又、私がルヴァ様ファンであることを
忘れられる…。
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