ホールに開演のベルが鳴り響く。ざわついていた観客達が静かになって行くのと比例して、照明が落とされて
ゆく。そして、ステージにスポットライトが落ちる。
 自然に溢れ出した拍手に応えるようにステージにアンジェリークが現れた。観客達に一礼する。
 そして、演奏の音が広がり始める。声が自然にアンジェリークの中から溢れ出す。誰もが、この一瞬に息を飲む。
どこまでも透明な歌声は心に染み透ってゆく。広がり行く世界はドーム会場全体を包み込んでいった。


 レヴィアスの死から、一年が過ぎた。アンジェリークは今もこうして歌い続けている。大きなホールでも、小さな
ライブハウスでも。ステージがあり、観客がいれば、そこがアンジェリークの歌う場所だ。
(ねえ、レヴィアス、聞える? あなたがいる場所にあたしの歌が届いている?)
 レヴィアスを失った直後はもう歌を歌えない、と泣き続けていた。だが、レヴィアスが残した手紙がアンジェリークに
再び歌と向き合うことを思い出させてくれた。
 自分の歌を多くの人に届けたくて歌手になった。その思いは変わらない。だが、それ以上にレヴィアスに届けたいと
願った。今は手の届かない場所に行ってしまった人。誰よりもアンジェリークを理解してくれた人に。


『あなたにとって、レヴィアス・ラグナ・アルヴィースとはどんな人ですか?』
 以前、アンジェリークに理解を示してくれている芸能記者に尋ねられたとき、アンジェリークはこう答えた。
「本当の大人の人。子供のあたしの言葉をちゃんと聞いてくれて、道を示してくれた人。あたしが男だったら、戦友に
なれた。でも、あたしがあたしだったから、出会えたとも思ってます。誰よりも尊敬してるし、誰よりも大切な人です」
 迷うことなく告げた。そして、こう添えた。
「一生分の真紅の薔薇をもらっちゃった……。最期の日も約束通りに……。もう、誰からの薔薇も欲しくないなぁ……」
 レヴィアスがあの日に贈ってくれた最期の薔薇はカインの伝で、影響に枯れないようにとの処理を施してもらった。
それは今もアンジェリークの元にある。花びらを一枚だけ加工して、ペンダントトップにもしてもらった。それはいつも
身に付けている。
 この話はアンジェリークに好意的な記事として、雑誌に書かれた。それ以来、アンジェリークの元に真紅の薔薇は
届けられない。そのことにアンジェリークは苦笑するしかなかった。


「皆さん、最後まで聞いてくれてありがとう」
 アンコールに応え、ラストにアンジェリークが歌うのは初めてレヴィアスと出会ったときに歌った歌だ。心を込めて、
歌い出す……。
(あたしの夢は届いてる……? あなたに出会って、あたしも夢をみつけたんだよ……)
 これから先、誰かに恋をしてもきっと変わらない。それは思慕。それがあるから、信じて明日へ踏み出せる。そして、
歌い続けようと思える。それはきっと夢見る頃を過ぎたとしても……。


 やがて、歌い終り、シンと会場が静まる。アンジェリークが会場の全ての人間に一礼すると、会場は割れんばかりの
拍手に包まれた。


 やっと完結しました。コピー本ではレヴィアス視点でずっと書いていた話ですが、どうしてもアンジェリーク視点で書きたくて、
こっちに発表という形にしました。コピー本ではレヴィアスの死で完結しています。これはこの話の元ネタに使った、アリスソフト様の
夢幻泡影というゲームからです。(18禁ですので、元ネタを知りたい方は18歳以上になってから、調べてみてください)
レヴィアスと勝気アンジェの二人にさせてみたら、私的に楽しいなぁ…と思って、書いたのです。元ネタも主人公の死で完結してますが、
でも、その後の話を書いてみたかったのですよ。
タイトルの「夢見るころを過ぎても」というのは、好きな歌の歌詞の一部からを。…アルバムの曲だから、知る人は絶対少ないですね。
自己満足なこの話にお付き合いいただいて、ありがとうございました。


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