「お帰りなさい、炎先輩!」
現代に戻った炎をダグオン全員で出迎えてくれた。宇宙人はあらかじめ捕獲していた身体に戻ってきたところを倒したという。
「炎先輩が弱らせてくれたおかげですよ」
雷はそう告げてくれた。そのあとは色々とあったことを簡単に説明し、メディカルチェックを受けてほしいという雷の言葉に従い、メディカル
チェックを受けた。他のメンバーは先に戻ったので、炎が一人、ダグベースを出たのは黄昏時になってしまっていた。
「お疲れ様でした、炎先輩。ゆっくり休んでくださいね」
「ああ、お前もな、雷」
見送ってくれた雷に手を振って、炎は歩いてゆく。だが、目的は家路ではなかった。
「よぅ」
いつも竜がいるその木。今も、そこに彼はいた。炎が声をかけると、ゆっくり顔を上げる。黄昏時で、表情は見えることはなかったが。
「あのさ…」
とりあえず、話し出そうとするが、何を言えばいいのかが、思いつかない。
「俺が話してもいいか?」
「竜?」
きょとんとする炎。自分から彼が話すことなんて、滅多にない。
「雷に説明を受けた。お前に出会ったことは忘れるように時空が作用していたと……」
「……」
「だが…それでも俺は心のどこかで誰かを待っていた。目の前の鮮やかな真紅が時々、頭の中をよぎってたんだ……」
そう告げると、竜は自分が持たれていた木を見上げる。
「入学試験の時、俺とお前はここで出会った。あの時、俺がここにいたのは、多分無意識だ。あの時の言葉を心のどこかで覚えていた……」
「あ……」
戻ってくる時に竜に告げた言葉。いつか会える。この木の下で。そして、出会った。何も知らないままで。自分たちの運命も、何もかも……。
「ずっと、会いたかった。お前に言いたかったことはたくさんあるはずなのにな。何も思いつかない……」
「別にいいんじゃねえのか。言葉なんて。今、ちゃんとここにこうしていれば」
大切なのは、現在だから。今ここにこうしている二人。
「そうかもしれないな……」
「でも、俺たちって、はじめての出会いも、2度目の出会いもこの木の下か……」
何気なく、炎が言った言葉に二人顔を見合わせて、笑いあう。蘇った記憶と共。けれど、それは決しして不可解なものではなくて。互いに
奇妙なくすぐったさがあって。それが心地いい。
いつか、どこかで。それは不確かな言葉。けれど…巡り合うべき運命の二人には必然の言葉となる。
そう、二人は巡り合ったのだから……。
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