さて、話を過去に戻すと、竜はようやくウサギの釣れてきた場所に辿りついた。着いていった先は洞窟のような場所。その周囲は更に
木々や草が枯れ始めている。
「一体……?」
そっと洞窟をのぞき込んでみると……。
(あれは……?)
不可思議な光を発した物体が宙に浮いている。小さな宝玉。クイ…と、ウサギが竜のズボンの裾を噛む。
「あれが…原因なのか?」
頷くようにウサギの耳が揺らぐ。ウサギや森の様子から察すると、彼らのエナジーを吸い取っているらしい。
「……」
未知の物体を前にして、竜の足が竦む。見たことのない、化け物とも呼ぶべき存在。
(どうする……?)
だが、助けを求めたところで、誰が信用するだろう。子供の言う事だ…と、笑われるのがオチである。
(でも、あいつなら……?)
不意に脳裏に浮かぶのは先ほどまで一緒にいた人物。裏山に何か変わったことがないか…そう、奇異敵た。もし、彼が調べていた
ことと、これが同じなら……。
「――!」
竜はうさぎを抱き上げると、走り出そうとする。だが――。
ガサッッ! 慌てていたために、茂みに足を取られる。なんとか、体勢を立て直すが、間に合わなかった。
“フン、地球人の子供か……”
目の前に立ちはだかるのは禍禍しい声を出す物体。きつい視線を投げかけることだけが、居間の竜の精一杯であった。
“おや、お前からはダグオンと同じオーラが……。そうか、あのうちの一人か……”
「何のことだ?」
何のことを言っているのか、誰のことを指しているのか、理解できない。
“ちょうどいい、ここでお前を俺の餌にしておけば、戻った時の俺の手間も省ける…か”
その言葉と共に、シュルシュルと触手が伸びてくる。逃げ出そうとするが、間に合いそうもない。
「あ……」
咄嗟に目を閉じて、身を竦める。力のない自分が悔しい。もっと、力があれば――。そう、ひたすらに竜は痛感した。
「――!」
「お、おい、竜?」
呆然とした様子で裏山の奥に進んで行く竜を追いかけていた森は不意に立ち止まった竜に戸惑う。
「森……」
トーンを押さえた竜の声。
「お前が言ったこと…俺が、過去に炎にあったということ……。記憶が封印されている…と」
「ああ」
「もし、それが本当だとしたら、どうするつもりだ?」
「真っ先に炎に知らせるさ。そのためにお前さんに探りを入れてるんだからな。それに、あいつが戻るところも見てるだろうし」
「……やはりな」
確信したように呟く竜の表情を見て、森はあることに思い当たる。
「お前、記憶が……」
確信したような新の言葉に竜はゆっくりと頷く。
「ったく…手間取らせやがって……」
そう言いながらも、森はダグコマンダーで翼と雷に連絡をいれる。
「ダグベースから、過去にあいつにアクセスできる。お前さんが不意に思い出したってことは切羽詰ってることだろうしな」
「ああ……」
不意に蘇った記憶。目の前で広がるのは、真紅。血の色ではなく、情熱の紅。確かに見た記憶。朧げだったものが鮮やかに脳裏に
映し出された。
森とともに竜はダグベースに向かう。彼にとっては過去のこと。そして、過去にいる炎には現実の問題を解決するために……。
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