「私たち天使は長い時の中、女神にお仕えするために生まれてきたのですわ。ですから、寿命はとても長いんですの。
ですが、その反面に生まれてくる天使たちは少ないんですの」
 長い時を生きれば、生きる種程に出生率は低下する。それはとても自然な摂理。天使たちも同じようなものなのだろう。
「ですから、天界で生を受け、生まれた天使は祝福を受けた存在なのですわ。そして、同じ時に生を受けて生まれる天使の
存在は希にも等しいのです。ですから、"時を同じくして生まれた天使"だと言われ、特別な存在としているのです」
「つまり、あなたとアンジェリークもそれに当てはまると言うのですね?」
「お察しが早くて助かりますわ」
 そう答えて、優雅に微笑んでみせるロザリア。対照的に、クラヴィスの腕の中にちょこんと収まって、様子を伺っている
アンジェリーク。同じ時に生まれたと言われて、"はい、そうですか"と納得できるはずもない。
「ですが、アンジェは貴方とは違い、このような愛らしい幼子なのですよ」
 そう言って、二人をかばうように前に出るリュミエール。ロザリアの目的は定かではないが、こうして姿を現すということは
ろくでもない話の確率の方が高いに決まっている。子の小さな天使のおかげで、せっかく、クラヴィスが毎日を楽しく過ごせる
ようになったのだ。それを阻止するのは当然の役目であろう。いや、リュミエールにとっては、神に与えられた使命にも等し
かった。
「リュミエール。その天使の言葉は間違ってはいない」
「クラヴィス様?!」
「その天使はこれと似た"気"を持つ。恐らくは、これと対の存在のようなものなのだろう……」
 その言葉に説得力を感じるのは、クラヴィスがロザリアが姿を現す前から、そのの気配を感じていたから。恐らくは彼の
持つ水晶球にも、何か映っていたのかもしれない。
「あなたは人間にしては鋭い感受性の持ち主のようで、こちらも助かりますわ。ならば、私の申し上げたいことも分かって
下さるでしょう?」
「わかりませんし、わかりたくもありませんね!」
 クラヴィスが答える前にリュミエールがきっぱりと言い切ってしまう。
「あなたに尋ねているのではありませんわ」
「いいえ。私もアンジェリークと共に過ごしていましたのですよ。答える権利は十分にあるはすですよ。あなたも察しのいい
方だと思っていたのですが、どうやら私の見当違いのようですね」
「何ですって?! あなた、天使であるこの私を愚弄なさるつもりですの?!」
「おや? そのように激昂なさるということは、あなた自身もそう認めておられている野ではないのですか?」
 にこやかな笑顔と口調はあくまでもやんわりと真綿で包むように。だが、その下には鋭い刺を仕込んでいる。穏やかな
口調と男性にしてはたおやかな外見にだまされ、痛い思いをした者を数多く知っているため、クラヴィスはこの場を静観する
だけである。
「……」
 ギュッと、アンジェリークがクラヴィスの服の裾を掴む。
「どうした?」
「……」
 困ったような顔で、リュミエールとロザリアを指差すアンジェリーク。あまりにも険悪な雰囲気にどうしたらいいのかわから
ないようだ。
「あの二人が争うのは嫌か?」
 その言葉にコクコクと頷く。
「ならば、その意思は自らで伝えればいい……」
 そう言って、アンジェリークを放してやると、パタパタと二人の元に飛んでゆく。
「「アンジェリーク?!」」
 ほぼ同時に呼び掛ける声に、アンジェリークは二人の間に入る形の位置まで移動する。
「おまえたちの諍いを見たくない、それの意思だ……」
 クラヴィスのその言葉に二人はアンジェリークに視線を向ける。この小さな天使の胸を痛めてしまったことへの罪悪感が
胸の中を過ぎる。
「確かに私の方はは天使らしからぬ言動でしたわね。その点は反省いたしますわ」
「わかっておられるのなら、最初からそう言わなければよろしいでしょうに……」
「――!」
 ロザリアを挑発しつつ、リュミエールは穏やかな笑顔でアンジェリークの方を向く。
「ご心配をおかけするつもりはなかったのです。あなたに愛らしい笑顔が私のために曇るのは、胸が痛みます……」
「……」
 この態度の違いに、ロザリアもクラヴィスも何も言う気が起こらない気がしてくる。
「話を元に戻してくれ……」
 それがクラヴィスの心からの本心であった。不毛な争いと眺める趣味はない。できれば、避けて通りたい。だが、この腕の
中の小さな天使をめぐるのだから、そうもいかないのも事実。どこかで流れを変えなければならないのだから。

リュミエール様って、敵にまわしたくないよね……。この人もアンパンマン?(顔はにっこり。中が黒い(>_<))

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