その日は叩き付けるような激しい雨が降っていた。
 その雨の中を傘も差さずに歩く青年が一人。周囲の視線など、気にしていない様子。
 そんな青年の瞳はどこか虚無的で。何も移さないかのような無機質な色。唯一、映し出しているのは
限りない孤独。
 しばらく歩き続けていた青年はふと、公園に足を踏みいれる。聞こえてくるブランコの音。その音に導か
れるように、ブランコの所まで歩いていくと、そこには一人の少女の姿。まだ、十歳くらいだろうか。黒い服、
黒い靴。栗色の髪にも黒いリボン。その服装に合わせるかのように無機質な瞳。そう、青年と同じ色。雨に
濡れるのも構わずに、ブランコに揺られている。
「どうした、こんな雨の中?」
 どうして声を掛けたのか、青年も不思議だった。だが、声を掛けずにはいられなかった。
「行くところがないの……。」
 ポツリと呟くような少女の言葉。黒い服。黒い靴。行くところがないという少女の言葉。それが意味している
のは……。
「おまえ……。」
「もう…誰もいないの……。私…独りぼっちなの……。」
 淡々としたトーン。けれど…微かに震えている声。寒さのせいだけではないだろう。なぜだか、青年の胸が
痛む。少女の中に、自分と同じ何かを感じたからだろうか。
「……俺と来るか?」
 その言葉に俯いていた少女が顔を上げる。どうして、そんなことを言ったのか、青年にもわからない。
「俺も…誰もいないんだ……。」
 手をさしのべる。理由はどうでもいいことなのかもしれない。ただ…この少女を独りにしておけなかった、それ
だけのことなのかもしれない。
「いいの?」
 躊躇いがちに少女が尋ねる。アリオスは手をさしのべたまま、何も言わない。この手を取るのも取らないのも、
選ぶのは少女だから。
「行くわ、私……。」
 ブランコから降りて、手を伸ばして、少女は青年の手を取る。少女もまた青年に何かを感じたのかもしれない。
その瞳には迷いはない。
「俺はアリオス……。おまえは?」
「私、アンジェリーク……」
「アンジェリーク…か。天使の名前だな……。」
 アンジェリークの手を取って、アリオスは歩き出す。そして、ここから、二人の物語は始まってゆく……。


プロローグです。FAXフレンドでもあるお知り合いに「こういう話を考えてて、設定が…」って軽い気持ちで
話したら、「亮さん、書かなきゃ」と…。この話がこういう形で発表できて、どう思ってるのかな…。

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