おやつの時間の後はアンジェリークはお昼寝タイムである。特製の籠のベッドの中でスヤスヤと眠っている。本当の
天使の寝顔はやはり可愛い。
「やっと一息着いたね……」
「う、うん」
 残った書類の山を二人で片付ける。ショナ一人ではやはり大変だったのだ。
「でも、た、楽しいよ」
「……そうだね」
 振り回されるのは大変だけれど、無邪気な笑顔の前ではそれも飛んで行きそうだ。

 ようやく仕事を終わると、レヴィアスは車を急がせる。
「ゲルハルト。もっと早く走らせられないのか」
「よっしゃ、判りました。舌を噛まないように気をつけてくれよ、親分!」
 主の言葉に気を良くしたゲルハルトはアクセルを全開にする。普段はカインやキーファーが安全運転を、と耳にタコ
が出来るくらいに煩く言われ、辟易していたが、レヴィアスがいいと言ったのなら、話は別である。
 法定速度をぶっちぎり、狭い裏道も気にすることのないゲルハルトの運転をレヴィアスは顔色一つ変えることなく携帯を
手に電話をしている。
(流石は親分だ……)
 ゲルハルトの妙な感心は置いておくとして、レヴィアスは買ったばかりで連絡を取っているのは腹心の部下でもなく、
ショナが相手で。
「我だ。今、帰宅する」
 ハードな運転の車の中、しっかりと帰るコールをするレヴィアスはある意味、すごいのかもしれない。細かいことを気に
しないゲルハルト相手である意味、良かったのかもしれない……。


「……はい。わかりました」
 電話を切ると、ショナは昼寝から目が覚めたばかりのアンジェリークをあやしているルノーに声をかけた。
「ルノー、もうしばらくしたらレヴィアス様がお戻りになるよ」
「う、うん。で、でも、いつもより早くない?」
「車のエンジン音がすごかったんだよ。ゲルハルトがかなりスピードをだしてるんだろうね」
「ふーん……」
 よくはわからないけれど、急いで帰って来ているらしい。
「ア、アンジェリーク。も、もうすぐレヴィアス様がお帰りにな、なられるから。お出迎えしようね?」
「♪」
 ルノーの言葉に寝起きでボーッとしてあたアンジェリークはそれでも嬉しそうに頷いた。
 ぱたぱたと小さな翼をはためかせて。窓ベから車が見えるのを待ち構えるアンジェリークの姿は見ている者を和ませる。
やがて、車が玄関の前につくと、アンジェリークはぱたぱたと玄関まで飛んで行く。窓から直接飛び出さないのは行けない
ことだからと、ショナとルノーが二人がかりで諭した功績だ。
 だが、アンジェリークだって、レヴィアスのことが大好きで。身体いっぱいでそれを伝えたいのだ。
「♪」
「アンジェリーク!」
 ギュッと限りない愛しさをこめてレヴィアスはアンジェリークを抱き締めて。アンジェリークも幸福そうにレヴィアスの腕の
中に収まって。
 使用人たちは自分たちは何も見てはいないと自分に言い聞かせる。懸命な判断である。
 自分たちの世界を作っている彼等に茶々を入れるなどという命を捨てるような真似など出来るはずもない。
「ア、アンジェリーク、嬉しそうだよねえ……」
「そうだな。ちょっとの間だけ離れてただけだってのに、泣けるよなぁ……」
 感動の空気に包まれているルノーとゲルハルトにショナはどう反応するべきかしばらく逡巡していた。

ショナ、君の反応は正しい……


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