| 広い敷地の館の中にある、色とりどりの花が咲く中庭。もっとも、この館の主である、レヴィアス・ラグナ・アルヴィースは 花には全く興味がなく。庭師に任せたきりであった。 闇よりも深き漆黒の髪、すらりとしてはいるが、適度に筋肉がついて引き締まった長身の肢体。整えられた顔立ち。だが、 何よりも人目を引くのが、金と緑の異彩を放つ瞳である。神秘的で近寄りがたい雰囲気を作り出している。だが、それは彼に とって、都合のいいことであった。 大財閥の総裁である立場上、その権力や資金力を目当てに近づいて、彼を利用しようと考えるもの達があとをたたない。 少ない言葉と共にその異彩を放つ瞳でにらみつけようものなら、誰もが恐れて去ってしまう。だから、彼の周りには真に彼を 慕うものしか置いてはいない。 総裁といっても全部の企業を見るわけではないし、直属の部下達を使い、さまざまな部門で活動をさせる。彼は全体を見て、 必要なところに的確な指示を出すだけだ。だが、そのやり方で地方の1企業に過ぎなかった会社がレヴィアスの代で大財閥 へと発展したのだ。 「レヴィアス様……」 第1秘書であるカインが書類を持って、部屋に入ると、そこには誰もいない。最もいつもの事なので、気にも留めない。 レヴィアスが時折庭に出るのは習性のようなもの。今でこそ、大財閥の総裁として君臨しているが、両親や親族との確執で 過ごしていた少年時代によく、一人になれる場所に行くのが彼の常だったのだから。出て行く前に仕事は全部片付けている ので、あまり問題もない。しかも、この館のセキュリティは万全であるから、庭であっても安心できるのだ。部下達も庭がレヴィ アスの場所であるのを知っているから、必要な時以外は庭には出ない様にしている。時々、年少の部下が外にではするが、 レヴィアスがいない時を見計らってからだ。 だから、今日もいつものように彼が庭に出たと思ったのだ。そう、いつもと変わらぬ日常のままに…と。 ふわり…と風に甘い花の香がのって漂う。花には興味がないが、自然のあるがままの花の香りは嫌いではない。 「……」 ふと、暖かな何かを感じ、レヴィアスは周囲を見回す。だが、誰もいない。当然だ。彼が庭に一人でいるときには 誰も訪れないようにしているから。だが、確かに感じた温かな気配。 すると、ふわふわとした光の球のようなものが宙に浮いている。 「何だ、これは……?」 セキュリティが万全なはずのこの屋敷にこんなものが浮いている事自体がおかしいと思いはするが、暖かな光を 放つそれ自体には危険はなさそうだ。 ちょうどバレーボールくらいの大きさのそれはふわふわと浮きながら、レヴィアスに近づいてくる。 「……」 反射的に手を伸ばしたのは何故なのか、それは後になっても理由がわからなかった。敢えていうのなら、魅入られたのかも しれない。 それは触れてみると、思ったとおりに暖かかった。心地よい暖かさというべきか。感触はふわふわとしたもの。危険だとは 思えなかった。 そっと抱きしめてみると、柔らかな光はさらに明るく、暖かくなってくる。それはだんだんと強くなってくる。 「――?!」 驚く間もなく暖かな光が段々と収縮し、輝きが強くなる。 「な……?!」 光が弾ける。一瞬、目を閉じてしまう。すると、腕の中の温かさも拡散する。 「……?」 数秒後、ゆっくりと瞳を開けると、光の球は小さな流離となって、空気中に拡散している。そして、その中心には――。 |
読み返すのが面倒という指摘もあり、まとめてみる事にしました。しばし、お付き合い下さいませ。
‖<Angel Days>‖ <2> ‖