Sweet Night
夜の帳はとうに降りて。今は秘め事の時間。淡いランプの光に照らされて。不思議な縁で結ばれた 新郎と新婦の夜。 「カナン……」 名前を呼ばれ、そっと頬に触れられると、カナンは身をすくめた。これから、自分の身に降りてくることを 考えると、どうしても身体がこわばってしまう。 「お嫌ですか?」 気遣うようなセレストの言葉にカナンはふるふると首を振った。 「あ、あなたはどうだかしらないが、僕はこういうことは初めてなんだ。だから、その、緊張して……」 真っ赤になりながら、応える愛しい人にセレストはそっと微笑んだ。 「無理強いはいたしません。あなたにこういうことで嫌われたくはありませんから」 ふわりと羽のように優しいキス。泣きたいくらいに優しくて。 「あなたはそれでいいのか?」 「……微妙ですけれど。あなたに嫌われることよりはずっといいですから」 「馬鹿……」 プロポーズしてきたときにはいやというほどに強引だったくせに。今はこんなにも優しいだなんて。 泣きたいくらいに切なくて。そして、愛しさが溢れ出す。 「…僕は男だ。あなたを満足もさせてやれないかもしれない。それに、やっぱりこういうのも経験がない から、怖くないといえば嘘になる。でも、あなたに、セレストに触れられるのは嫌じゃない……」 そう告げると、カナンはギュッとセレストに抱きついた。 「……嬉しいです」 驚きながらも、抱きしめ返す腕はやっぱり優しくて。まるで壊れ物を扱うみたいに触れられるのは、 面映いけれど、嬉しいと思っている自分がいる。こんなにも、自分を慈しんでくれる人がいる。それが 嬉しいことだと初めて知った。 「愛しています」 そっと耳元で囁かれて、身体中の力が抜ける。セレストは魔法を使えるわけではないのに。いとも、 たやすく。優しい緑の瞳で見つめられると、取り込まれそうになる。 ふわり、とほほに、まぶたに。優しい口付けが。触れるだけの優しいそれに、 「セレスト……」 大切だと思った人の名を呼ぶことが、切なくて甘い何かが生まれることを知った。セレストも同じなの だろうか。 「ん……」 優しい、先をせかさない口付け。素直に溺れてみたくなる。いつしか、セレストの手は華南の後頭部に 回っていて。角度を変えて、何度も口付けられた。 「ふ、ぁ…っ……」 なれない口付けに息があがると、ようやく唇が離された。 「あ……」 パラリ、と結っていた髪が落ちる。キスの合間に解いてしまったのかと、セレストに視線を向けると、 「お綺麗です」 と、嬉しそうな表情で言ってのける。 「馬鹿者……」 真っ赤な顔で顔を背けると、セレストの手はさらさらの金糸をゆうるりと手で梳いてゆく。その手も優しい。 「続きをしてもよろしいですか?」 耳元で囁かれたその言葉に真っ赤になりながらも、カナンはコクリ、と頷いた。 |
…そういうわけで、初夜編です。あ、続きます。てへっ。